楽天、交流戦初V

価値ある戴冠

 楽天が球団創設20年目という節目の年に交流戦の初優勝を果たした。交流戦前は3連勝がなく、5月21日からのソフトバンク2連戦では、0-21、0-12と大敗。それらを含む6連敗もあり、18勝26敗1分け(パ・リーグ5位)と波に乗れなかった。交流戦に入ると気配が一変し、3連勝と4連勝、5連勝が一度ずつ、2連敗が一度だけという堅実な戦いぶりだった。雨天によるコールド負けが二度という不運を乗り越え、パ・リーグ首位のソフトバンクを振りきって、13勝5敗で頂点に立った。セ・リーグで首位を争う巨人と阪神という人気球団に全勝しての価値ある戴冠だった。

先発投手の’’奮投’’

 13勝のうち先発投手は8勝、救援陣は5勝を挙げた。2年ぶりの交流戦の登板となった藤井聖は5月30日のDeNA戦で交流戦初勝利を挙げると、交流戦トップタイとなる3勝をマーク。今季から先発に転向した内星龍は、同月29日のDeNA戦で交流戦初先発勝利を挙げると2勝をマーク。藤井も内も規定投球回数にわずかに届かなかったが、防御率はそれぞれ1.56、1.06と先発の役目を十二分に果たした。早川隆久は3試合に登板し1勝だったものの計23イニングで自責点はわずかに1。防御率0.39(個人投手成績3位)と抜群の安定感を見せた。4月には捕手批判ともとれる発言で物議をかもしたが、開幕投手の風格と実力を誇示した。交流戦初登板となる松井友飛と昨年のドラフト1位の古謝樹も1勝を挙げた。

救援陣の踏ん張り

 九回の逆転で3勝、延長戦を制して1勝を挙げたが、救援陣の踏ん張りも大きかった。7試合に登板した渡辺翔太は2勝1ホールド。8試合に登板した鈴木翔天は1勝1S3ホールド。ともに無失点だった。クローザー・則本昂大は5月30日のDeNA戦から6試合連続でセーブを挙げ、勝利に導いた。

攻撃陣の立役者

 攻撃陣の立役者は6年目の小郷裕哉だった。全試合トップバッターとして出場し、交流戦打点王の近藤健介(ソフトバンク)に1打点及ばなかったが、チームトップの13打点を叩き出し、チームの総得点(67点)の約2割を稼いだ。6月5日の阪神戦では九回二死、昨季の日本一の守護神・岩崎優から起死回生の逆転2ラン。8日の中日戦ではプロ初の満塁弾。11日の巨人戦では九回二死から逆転サヨナラ二塁打。打率は2割4分7厘(個人打撃成績33位)も、ここ一番での勝負強さが光った。

見事な用兵術

 今季から指揮を執る今江敏晃監督が用兵に見事な手腕を見せた。不振の島内宏明を交流戦が始まる前日に登録抹消。開幕当初はスタメンで起用していたが、調子が上がらない茂木栄五郎は代打で起用。茂木は7試合に出場し、4打数3安打1打点。代打の代打を送られることが二度あったが、代打打率7割5分という好成績を残した。

チームの顔を外す

 4番の不振が得点力を低下させているとの判断から、チームの顔というべき浅村栄斗を6月1日のヤクルト戦から4番を外した。さらにDHが使えない4日の阪神戦から6試合はベンチスタートで起用。そこからチームは5連勝と波に乗った。浅村は11日のスタメン復帰戦で、2-6の八回に追撃の2ランを放ち、小郷のサヨナラ打につないだ。自分の打撃を見つめ直す機会を得た効用か、その日以降は22打数7安打(3割1分8厘)2打点と復調した。

代役4番の躍動

 浅村の代わりに交流戦の最終戦まで4番に座った鈴木大地は、6月4日に通算1500安打、12日に全球団本塁打を達成するなど49打数15安打(打率3割6厘)6打点と躍動。交流戦の最終カードとなる広島戦での1試合2犠打を含む3犠打を記録し、つなぎ役としてもチームの勝利に貢献した。チームの勝利を最優先し、実績のあるベテランでもメンバーから外すことをためらわない決断力と実行力。不惑の新人監督は「四十にして惑わず」を実践した。

大きな「いただき!」

 リーグ5位以下からの交流戦の優勝は、06年のロッテ(交流戦前5位)、18年のヤクルト(同6位)、21年のオリックス(同5位)に次ぎ4球団目となる。18年のヤクルトは2位でシーズンを終え、21年のオリックスはリーグ制覇をした。今江監督は、今季のチームスローガン「いただき!」に絡めて、「交流戦の優勝は小さな頂だけど、シーズンが終わる頃には大きな頂の景色を皆さんにお見せできるようにしたい」と発言した。交流戦前に8あった借金を完済したチームは、大きな「いただき!」を次の目標に据えている。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA