今季の楽天のキーマン 宗山塁

ドラフトで5球団が競合
 昨年のドラフト会議は単独指名はヤクルトだけで、11球団の指名が3選手に集中した。その中で最も多くの球団から指名されたのは、5球団が競合した宗山塁(広陵高-明治大)だ。宗山の出身地の球団である広島は1位指名を事前公表し、西武、日本ハム、ソフトバンクが交渉権を争った末、楽天が交渉権を獲得した。

史上最高の左打ち遊撃手
 宗山は走攻守三拍子揃ったアマ球界ナンバー1と目される遊撃手。東京六大学歴代7位となる通算118安打を放ち、通算打率は同6位の3割4分4厘。遊撃手としてベストナインに4度選出された経歴を持つ。同じポジションで、ベストナインに5度選出された大引啓次(オリックスなど)の通算121安打(同5位)には及ばなかったが、同じくベストナインに5度選出され、115安打(同10位)を記録した鳥谷敬(阪神)を超えた。東京六大学史上最高の左打ちの遊撃手と言えよう。

三木監督の三遊間の構想
 昨季、楽天で遊撃手のレギュラーを務めたのは高卒9年目の村林一輝。プロ入りして初めて規定打席に達し、打率2割4分1厘、50打点、6本塁打。守備では遊撃手としていずれもリーグ最多となる刺殺223、補殺392、併殺95を記録。守備率は遊撃手としてリーグ4位となる9割7分9厘(13失策)という成績を残した。今季、5年ぶりに復帰した内野手出身の三木肇監督は、村林を三塁手にコンバートし、期待のルーキーを遊撃手として起用し、三遊間の守りを固める方針を打ち出した。それだけ宗山の守備力を買っているということだろうが、新人に定位置を追われる格好になった村林の胸中はいかばかりか――。

シーズン序盤は天分を発揮
 それが村林のハートに火をつけ、尚且つ宗山も期待に違わぬ働きをすれば、チームとしては万々歳だ。だが宗山がプロの壁に阻まれた場合、村林を遊撃手に戻すのか、それとも遊撃手には別の人材を起用するのか。そのシミュレーションが三木監督の頭の中にはあるのだろうか――。宗山は開幕スタメンを勝ち取り、4月16日には12球団の新人一番乗りとなるプロ1号を放つなど、シーズン序盤は天分を発揮している。20年に1人といわれる逸材が、今季の楽天のキーマンになるのではないだろうか。

2025年の注目株

虎打線のキーマン
 藤川球児新監督のもとでセ・リーグの覇権奪還を狙う阪神。打線のキーマンに智辯学園高から2022年に入団した前川右京が挙げられる。昨季は116試合に出場し、打率2割6分9厘、4本塁打42打点。オープン戦では12試合に出場し、打率3割1分6厘(3位)、トップタイの3本塁打、6打点。特筆すべきは長打率.632だ。2月22日には6番スタメンで、楽天・則本昂大からオープン戦チーム1号となる3ラン。佐藤輝明とアーチ競演を見せた。3月5日の中日戦では涌井秀章からソロ。翌々日のDeNA戦では東克樹から2ラン。いずれも実績のある投手から放ち、後の2発は甲子園での一撃だった。同月15日のカブスとのMLBプレシーズンゲームでは左翼線へ技ありの適時二塁打。左方向へも打てるようになれば、打率も上がってくる。今季の藤川監督の構想は、3番佐藤輝、4番森下翔太、5番大山悠輔。その後を打つ6番の打棒によりチームの得点力は大きく変わる。天性の長打力を開花させることができるか――。

ヤクルトのエースを狙え!
 昨年のオープンで防御率トップ(1.35)だったヤクルト・吉村貢司郎。シーズンでもその勢いを持続させ、9勝8敗。2年目でドラフト1位の真価を発揮した。オープン戦は3試合に登板し、16イニングで防御率0.56(2位)。失点はオリックスの新外国人選手ジョーダン・ディアスに被弾したソロのみと、昨年同様オープン戦から仕上がり上々だ。直近5年のヤクルト投手陣でシーズン二桁勝利を挙げたのも規定投球回に到達したのも小川泰弘だけ。その小川も三十代半ばになり、往年の力に陰りが見える。先発ローテの大黒柱として高津臣吾監督の期待も大きい。ヤクルトのエースを狙え!

ソフトバンクの育成出身左腕
 2023年に育成ドラフト10位で入団したソフトバンク・前田純。昨年7月に支配下登録され、9月に初登板初先発でプロ初勝利を挙げる。オープン戦は、3月4日のヤクルト戦に2番手で登板すると、3イニングで5つの三振を奪い、パーフェクトに抑える。先発のチャンスを掴んだ同月11日の巨人戦は6回を無失点、同月19日の中日戦も先発で6回2失点(自責点1)。規定投球回未達も、防御率0.60と結果を残した。昨年の日本シリーズでは痛打されるシーンが目立ったが、それを糧に今季は飛躍を期す。

西武の地元出身のスター候補
 西武・西川愛也はオープン戦は14試合に出場し、打率2割8分9厘(5位タイ)、3打点。昨季、プロ入り最多となる104試合に出場し、打率2割2分7厘、6本塁打31打点8盗塁だった。外野手としてチームトップの100試合に出場。刺殺215もチーム最多で、失策はゼロ。堅実な守備が身上だ。昨季終盤は3番で起用されることが多かったが、西口文也新監督はオープン戦後半は1番右翼・長谷川信哉、2番中堅・西川という打順を組んでいる。金子侑司引退後、岸潤一郎や蛭間拓哉、奥村光一、新人・渡部聖弥らを加えた外野のレギュラー争いは混沌としている。地元の花咲徳栄高の出身ということもあり球団やファンの期待も大きい。レギュラーとして地歩を固めることができるか――。