ソフトバンク、9度目の交流戦V

歴代最多の9度目戴冠
 今年の交流戦の優勝争いは最後まで予断を許さなかった。予備日を除いた最終日にソフトバンクが勝つか引き分ければ、ソフトバンクがV。ソフトバンクが負け、日本ハムが勝てば、日本ハムがV。結果はソフトバンクがセ・リーグ首位の阪神を下し、2019年以来、歴代最多を更新する9度目の戴冠となった。

先発が”奮投”
 優勝を支えたのは、先発投手陣の”奮投”だった。開幕カードでは、先発が3試合を無失点に抑え、中日をスイープ。レギュラーシーズンの開幕ダッシュには失敗したが、交流戦では見事に成功し、波に乗った。交流戦防御率トップタイ(0.78)の大関友久は2022年から続く自身の交流戦での連勝を6に伸ばす2勝を挙げ、優秀選手賞を受賞。同じく防御率トップのリバン・モイネロは6月6日のヤクルト戦でNPB記録にあと1つと迫る18奪三振(外国人選手では最多)。計3試合で37奪三振、奪三振率14.48をマークし、セ・リーグの打者を力でねじ伏せ、1勝をマーク。開幕投手の有原航平は、交流戦前までは防御率は4点台で2勝5敗と振るわなかったが、2勝を挙げ、防御率0.86(4位)と復調した。

安定感抜群の四本柱
 前述の3人に2勝を挙げた上沢直之を加えた4人が先発した12試合で、チームが敗れたのは2試合のみ。四本柱は抜群の安定感を見せた。チームの12勝のうち先発の勝利は9個を数え、チーム防御率2.20に対して先発の防御率は1.77。先発がきっちりと役割を果たしたので、試合を優位に運ぶことができた。

最優秀選手は柳町
 攻撃陣に関しては、チーム打率(2割5分6厘)は4位、同本塁打(10本)は6位タイも、総得点79は交流戦トップだった。打線を牽引したのは、最優秀選手に輝いた柳町達。全18試合に3番としてスタメン出場。16試合で安打(8試合で複数安打)を放ち、3割9分7厘で交流戦首位打者となった。

先を見据えた小久保采配
 小久保裕紀監督の采配も冴えた。6日のヤクルト戦でセーブに失敗したロベルト・オスナから杉山一樹をクローザーに起用。杉山は配置転換後の6試合で自責点ゼロ、1勝3S1ホールドと指揮官の期待に応えた。5月に中継ぎから配置転換した松本晴は、優勝のかかった22日の阪神戦で、先発として初白星を挙げた。不振の山川穂高をスタメンから外し、16日には登録抹消し、調整に専念させた。17日の広島戦で左足のかかとを痛めた近藤健介を、交流戦の優勝がかかる状況であったが、最後の5試合はベンチから外した。目先の利益よりも先を見据えた。

ソフトバンクのアキレス腱

開幕捕手
 今季、ソフトバンクの開幕戦の注目の的は投手ではなく、捕手であった。なぜなら投手陣の栄誉ある役割は、昨年11月に小久保裕紀監督が、有原航平だと明らかにしていたからだ。2017年から正捕手を務め、昨季117試合に出場した甲斐拓也が巨人にFA移籍し、その後釜に誰が座るのか――。昨季、甲斐の次に捕手での出場試合が多かったのが、51試合の海野隆司。そのあと4試合の谷川原健太、3試合の嶺井博希と続く。今年のオープン戦での出場試合数は、谷川原は11試合、渡辺陸は8試合、嶺井は7試合、海野は5試合、牧原巧は1試合であった。開幕捕手はオープン戦で最多出場の谷川原が務めた。

’’攻守の要’’の流出
 ソフトバンク元年の05年オフ、97年から正捕手を務めていた城島健司がシアトルマリナーズへFA移籍。打率3割9厘、24本塁打、57打点。リーグ2位の盗塁阻止率3割9分7厘を記録した’’攻守の要’’の流出は大きな痛手だった。翌06年の正捕手候補は、6年間で出場87試合の最年長の的場直樹。出場試合数は05年の3試合のみという高卒6年目の山崎勝己。人材不足は明白だった。結局、山崎が捕手として103試合(計105試合)に出場し、打率2割2分9厘、19打点、1本塁打。盗塁阻止率は2割7分3厘(リーグ7位)。的場が82試合に出場し、打率1割4分6厘、8打点、本塁打ゼロ。盗塁阻止率は2割8分2厘(リーグ6位)。その結果、03年から3年連続でレギュラーシーズンの勝率1位(リーグ優勝は03年のみ)だったチームは、3位に沈んだ。

小久保采配の意図
 昨年の日本シリーズ。幸先よく連勝スタートを切ったソフトバンクだが連敗。タイで迎えた第5戦、甲斐に出場機会はなかった。第6戦は出場したので、ケガではなさそうだ。小久保采配の意図は、流れを変えるために海野を起用したのか――。それとも甲斐のリードが不満だったのか――。そして、この采配に甲斐は納得していたのだろうか。

編成上の大きなリスク
 捕手の移籍は人材の流出だけでなく、頭脳の流出でもある。FAがなかった時代には正捕手の移籍という事態を想定する必要はなかった。”扇の要”は経験が物を言うポジションだけに育成に時間がかかり、他球団とのトレードも難しい。外国人選手では補強できないだけに、今やそれはチーム編成上の大きなリスクとなっている。

捕手陣の奮闘が大きなウェイト
 チームは前身球団・南海の最後のシーズンである88年以来の開幕カード3連敗を喫した。4月末時点では借金は6つあり、最下位に低迷。だが、主力選手の戦線離脱を選手層の厚さでカバーし、5月25日時点では勝率を5割に戻し、首位までは4.5ゲーム差の4位に浮上。リーグ連覇は十分射程圏内だ。捕手陣では同月11日に、開幕一軍を逃した嶺井がプロ入り初となる1試合2発。チームの全得点となる7打点を稼ぎ出し、オリックスを首位から陥落させた。近藤健介、柳田悠岐、周東佑京、正木智也、今宮健太といった主力選手のケガが相次ぎ、小久保監督の開幕当初の構想が大きく崩れるなか、反転攻勢にはアキレス腱である捕手陣の奮闘が不可欠である。