阪神、球団初の連覇

先発3本柱でG倒
 今季、他球団を凌駕する戦力から優勝候補の筆頭に挙げられていた阪神。後出しじゃんけんになるが、阪神の優勝を阻めるとすれば、巨人と筆者は思っていた。藤川球児監督も同じ目算だったのか、開幕カードが巨人戦だったため必然的にそうなった可能性はあるが、巨人戦中心に先発ローテンションを編成した感がある。今季の巨人との対戦を終え、16勝8敗1分け。防御率リーグトップ(1.85)の村上頌樹は8試合に先発し4勝3敗。奪三振トップ(175)の才木浩人は6試合に先発し4勝。勝利数(16)と勝率(8割4分2厘)トップの髙橋遥人は4試合に先発し3勝1敗。先発3本柱が巨人から計11勝を挙げ、ヤクルト戦に次いで2番目に多い貯金を稼いだ。また優勝争いが佳境に入った7月下旬から8月下旬にかけての直接対決7連勝は阪神の優勝を決定づけるものとなった。

30歳の髙橋が覚醒
 昨季まで実働6年で通算成績が21勝20敗だった髙橋の覚醒はリーグ制覇の強力な原動力となった。3・4月は3完封勝利(防御率0.27)。5月は3勝(同1.52)を挙げ、球団ではジーン・バッキー以来の60年ぶりの3試合連続完封を達成。6月は4勝(同2.25)をマークし、セ・リーグの投手部門では初の3ヵ月連続の月間MVPを受賞。交流戦では村上は2勝、才木は勝ちが無い中で3勝を挙げ、パ・リーグの打者にも通用するところを証明した。また2連敗を2度、3連敗を2度、4連敗を1度止め、9月の7連敗もチームを救った。連敗ストッパーの役割も果たし、藤川監督が今季最も頼りにした投手だったのではないか。投手陣からMVPを選ぶとすれば、髙橋というのは衆目の一致するところだろう。

和製クリーンアップの威力
 近本光司が死球による骨折で2ヵ月半の戦線離脱という誤算はあったが、攻撃力はリーグ屈指だった。チーム打率と本塁打数はリーグトップ、総得点と長打率はリーグ2位。その中心となったのが森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔の和製クリーンアップだ。初の30本塁打超えの森下は佐藤とキングを争った。球団ではランディ・バース以来40年ぶりの三冠王を射程圏に入れる佐藤。かつて岡本和真(現ブルージェイズ)とキング争いをした大山は4年ぶりの20本塁打を達成。このトリオで昨季と同様に総得点の約53%の打点を稼ぎ、計94本塁打はヤクルトや広島のチーム本塁打より多い。対戦相手からすると3番森下、4番佐藤は”前門の虎、後門の狼”といったところか。5番大山は広島・新井貴浩監督がその存在感を高く評価していた。

救援陣の整備
 近年のプロ野球では優勝するチームには絶対的な守護神がいるが、今季の阪神はクローザーとして岩崎優(11セーブ)、ラファエル・ドリス(19セーブ)、工藤泰成(11セーブ)を起用。シーズン序盤は岩崎とドリスを併用、8月に2年目の工藤泰成(24年育成ドラフト1位)がプロ初セーブを挙げると以降は抑えに定着。昨季連続試合無失点のプロ野球記録を達成した石井大智が春季キャンプでのケガで戦線離脱したことで、セットアッパーには2年目の木下里都を抜擢。木下は昨季の11試合から44試合に登板数を増やし、15ホールド19HP(防御率1.61)と”勝利の方程式”の一角を担った。救援陣の整備は、現役時代に守護神として君臨した藤川監督の目利きと育成手腕の賜物だった。

クジ運も味方に
 2022年ドラフト会議の1巡目で浅野翔吾(高松商業高)を巨人と重複指名。抽選で交渉権を逃し、森下を指名。外れ1位の背番号1が入団してから4年間で阪神は3度のリーグ制覇。一方、浅野が目覚ましい活躍をできていない巨人のリーグ制覇は1度。20年ドラフトの1巡目では巨人を含めた4球団との競合の末、佐藤を獲得。当てるクジ運と外すクジ運――。運も味方につけ、2リーグ分立後では球団初の連覇を成し遂げた。

ソフトバンク リーグ3連覇

福岡では初の3連覇
 就任3年目の小久保裕紀監督が率いるソフトバンクが南海時代の1951~53年、64~66年に続く3度目のリーグ3連覇を果たした。3年連続勝率1位は王貞治監督時代の2003~05年(03~04年はダイエー)にあったが、リーグ3連覇は福岡移転後初となる。今季のソフトバンクはシーズン序盤は調子が上がらず、交流戦開始前まで貯金はわずかに1つだった。得意の交流戦では優勝こそ西武に譲ったが、14勝4敗(2位タイ)と上昇機運を醸成し、6月30日に首位に立った。それ以降は、勝率7割超というハイペースで首位を守り抜き、ペナントレースを制した(記録は9月17日現在)。

若手3投手の躍進
 昨季、有原航平、リバン・モイネロ、大関友久、上沢直之が二桁勝利を挙げたが、2年連続で14勝を挙げ、最多勝利投手賞を獲得した有原が昨オフ、日本ハムに復帰。2年連続で最優秀防御率投手賞のモイネロが3月のWBCにキューバ代表として出場した影響やコンディション不良もあり8月中旬まで登板がなかった。勝率第一位投手賞の大関は3勝4敗(防御率5.34)と昨季の横綱級の働きができなかった。苦境にあった先発陣を支えたのが、前田悠伍、大津亮介、松本晴といったキャリア初の二桁勝利を挙げた若い力だった。高卒プロ3年目の前田は開幕12連勝(防御率1.90)と先発陣を牽引した。7月は優勝を争う西武からの2勝を含む3勝(防御率0.33)と躍動し、初の月間MVPを受賞。チームの首位固めに大きく貢献した。大学から社会人野球を経て4年目の大津と大卒4年目の松本晴はともに11勝(防御率2.36、同2.91)をマーク。昨季はこの3人で貯金をつくれたのは大津だけだったが、昨季4→今季27と大幅に積み増した。チームの貯金の約7割を占め、この3人の躍進なしでは今季の優勝はなかっただろう。

強力打線の主役
 攻撃陣の最大の立役者は栗原陵矢だろう。開幕4番は柳田悠岐、その後山川穂高や近藤健介が重責を担った。シーズン序盤、小久保裕紀監督は”打線の核”に最適な人材を模索していたが、5月からは栗原を起用。その期待に応え、自己最多を更新する37本塁打、111打点(いずれもリーグトップ)をマーク。”投高打低”の近年のプロ野球でパ・リーグでは6年ぶりとなる100打点超えは特筆に値する。昨季は80試合の出場に留まり、メンタルの弱さも指摘されたが、今年から選手会長になり、地位が人をつくったのか――。山川の調子が上がらない中、昨季の総得点(551点)を大きく上回る総得点(647点)を挙げた強力打線の堂々たる主役だった。

新・リードオフマンの覚醒
 ソフトバンクのリードオフマンといえば周東佑京のイメージがあるが、7本の先頭打者弾を含む27本塁打を放ち、58打点を挙げた正木智也の覚醒も攻撃に厚みと多彩さを生み出した。昨季は17試合の出場に留まり、5年目となる今季の初出場も5月中旬と出遅れたが、初めて規定打席に到達。自己最多の24年の7本塁打から飛躍した。四球も多く選び、出塁率は3割8分5厘はレギュラーメンバーでは近藤に次ぐ高い数字だ。対戦相手からすると選球眼が良く、一発もある厄介なトップバッターだっただろう。

チームの顔が復活
 24年は52試合、昨季はレギュラー定着以降で最少の20試合と出場が激減した柳田。もうこれまでかと思われたが、37歳になった今季は119試合に出場し、リーグ3位の2割9分7厘、63打点、17本塁打と見事な復活を遂げた。かつてのチームの顔が最後のピースを埋め、他球団の羨望の的となる強力な和製クリーンアップが完成した。

チームの潜在能力の高さ
 ライバルの日本ハムには開幕から8連勝し、対戦成績は18勝5敗2分けと圧倒した。チーム本塁打はリーグトップの日本ハムより少なかったが、四球は100個以上多く、総得点は100点以上の大差をつけた。チームの失策もリーグワーストの日本ハムの81個に対し、44個はリーグ最少。チーム力の差は歴然としていた。エースがライバルチームに移籍するという危機を選手層の厚さで克服。若手・中堅・ベテランが融合し、チームの潜在能力の高さを見せつけた。