ベネズエラ初V 第6回WBC

多彩な攻撃
 前回王者の日本を破って、勢いづいたベネズエラ。準決勝では1次ラウンドで米国を倒したイタリアを、決勝では前回大会の準々決勝で敗れた野球の母国に雪辱し、初の栄冠に輝いた。一次ラウンドではチーム本塁打は5本(決勝トーナメントに進出したチームの中で6位)と少なかったが、準々決勝では3本、準決勝と決勝では1本ずつと本塁打で効果的に得点した。大技だけでなく、小技も駆使した。準決勝のイタリア戦の初回、日本戦で追撃の2ランを放ったマイケル・ガルシアがセーフティーバントで出塁し、次打者のときにエンドランを敢行。結果は中飛併殺に終わったが、機動力もあるぞというところを見せた。1点を追う五回、無死一塁からジャクソン・チューリオが犠打でチャンスを広げた。いずれも得点にはつながらなかったが、攻撃は多彩だった。1次ラウンドで成功させた7盗塁は、決勝トーナメントに進出したチームでトップだった。

スモール・ベースボール
 決勝戦は三回にガルシアの犠飛で先制。五回には日本戦で逆転3ランを放ったウィルヤー・アブレイユがソロ。リードを2点に広げたが、八回にそれまで5試合に登板し無失点だったアンドレス・マチャドが痛恨の被弾。試合は振り出しに戻り、流れは米国へと傾きかけたが、ここからがベネズエラの真骨頂だった。九回、先頭打者のMLBで3年連続首位打者ルイス・アラエスが四球を選ぶと、オマール・ロペス監督は代走に地元マイアミ・マーリンズ所属の新鋭ハビエル・ソノハを送る。4番エウヘニオ・スアレスのときにソノハは二盗を試み、巧いスライディングでタッチをかわす(チャレンジの結果はセーフ)。そしてスアレスが適時二塁打。日本のお株を奪うようなスモール・ベースボールを実践し、1安打で決勝点を奪った。延長でのタイブレーク制を見据えて早めに仕掛けたロペス監督の勝負眼も光った。攻撃面だけではなく、大会を通じて1失策だった堅守も特筆に値する。

国難にチームが結束
 ロペス監督は今大会で政治に関することに触れることを避けたと報じられた。年始のトランプ政権によるベネズエラへの大規模攻撃、同国からの渡航禁止令が発令されている状態で、主力選手の辞退が発生したもようだ。同監督の〈三千万に迫る人口の全員が我々の勝利を望んでいる〉との趣旨の発言は同国民の心情を代弁したものであっただろう。前回大会までのベネズエラは”自分たちの野球”をやっていた印象があるが、今大会は”勝つための野球”を徹底した。国難に選手の結束が固まり、チームがひとつになった末の戴冠だった。

日本8強で敗退 第6回WBC

ベネズエラに後塵
 連覇で4度目の世界の頂点を目指した日本。1次ラウンドは2度の零封勝ちを含む4戦全勝と前回大会覇者の貫禄を見せたが、準々決勝でWBCで初対戦となるベネズエラに後塵を拝し、大会史上初めて4強入りを逃した。なお8点は日本の大会史上最多失点で、3点差敗戦はワーストタイだった。
 
一次ラウンドは順当勝ち
 1次ラウンド初戦の台湾戦は二回に大谷翔平の満塁弾を含む大会記録となる10点を挙げ、13-0で7回コールド勝ち。2回2/3 を無安打に抑えた先発・山本由伸がエースの責務を果たした。前回大会で圧勝した宿敵・韓国との一戦。初回に3点先制され、厳しい試合展開となったが、鈴木誠也の2発を含む4本塁打を放ち8-6で逆転勝利。天覧試合となった豪州戦も六回に先制されるが、吉田正尚の逆転2ランで勝利を収めた。昨年プロ入りした金丸夢斗が2回無失点5奪三振の力投で勝利投手になり、一次ラウンドC組の1位通過を決めた。主力を休ませたチェコ戦は七回まで0-0という投手戦になったが、八回に均衡を破る9点を挙げ、投げては相手打線を2安打に抑え零封した。

チーム力の高さ
 1次ラウンドは得失点差25点(ドミニカ共和国に次ぐ2位)、チーム打率3割1厘(同2位)、同防御率2.12(プエルトリコ、カナダに次ぐ3位)。チーム力の高さを見せつけて、連覇への視界は良好だった。準々決勝のベネズエラ戦は、ロナルド・アクーニャJr.と大谷の先頭打者本塁打の応酬で幕を開けた。1-2で迎えた三回、先頭打者の源田壮亮が四球を選び、若月健矢が手堅く送る。大谷の申告敬遠のあと、12打数無安打の近藤健介に代えてスタメンに起用した佐藤輝明が適時打二塁打を放ち、試合を振り出しに戻す。そして負傷した鈴木に代わった森下翔太が低めの変化球を泳ぎながら巧みにすくい上げる。打球角度30度で上がった打球速度170km/hのボールは118mの飛距離を計測し、5-2とリードを広げた。

被弾で形勢逆転
 井端采配がズバリと的中したここまでは理想的な展開だったが、好事魔多し。四回の下位打線でつくった一死一・二塁という好機で、大谷と佐藤が連続三振に倒れたのが、悪い予兆だったか――。五回には隅田知一郎が2ランを被弾、六回には伊藤大海が逆転3ランを浴び、形勢は逆転した。そして八回には種市篤暉の牽制悪送球で致命的な1点を失った。

救援実績十分の投手の不在
 今大会でWBC初選出となった隅田も種市も一次ラウンドでは好投した。前者は韓国戦と豪州戦に1イニングずつ投げ無失点(計5奪三振)。後者は豪州戦で3回無失点(奪三振7)。だが決勝トーナメントでは苦しい投球となった。隅田は1年目に救援経験はあるが、2年目(2023年)以降はすべて先発登板。種市も19年に救援登板の実績があるが20年以降は先発に従事。痛恨の一撃を浴びた伊藤も23年以降は先発に専念している。試合の途中から登板することへの備えが万全だったのかどうか――。2月に相次いでケガにより出場辞退をした石井大智、平良海馬、松井裕樹といった救援実績のある投手の不在が影を落とした格好だ。次回への教訓となるだろう。