日本8強で敗退 第6回WBC

ベネズエラに後塵
 連覇で4度目の世界の頂点を目指した日本。1次ラウンドは2度の零封勝ちを含む4戦全勝と前回大会覇者の貫禄を見せたが、準々決勝でWBCで初対戦となるベネズエラに後塵を拝し、大会史上初めて4強入りを逃した。なお8点は日本の大会史上最多失点で、3点差敗戦はワーストタイだった。
 
一次ラウンドは順当勝ち
 1次ラウンド初戦の台湾戦は二回に大谷翔平の満塁弾を含む大会記録となる10点を挙げ、13-0で7回コールド勝ち。2回2/3 を無安打に抑えた先発・山本由伸がエースの責務を果たした。前回大会で圧勝した宿敵・韓国との一戦。初回に3点先制され、厳しい試合展開となったが、鈴木誠也の2発を含む4本塁打を放ち8-6で逆転勝利。天覧試合となった豪州戦も六回に先制されるが、吉田正尚の逆転2ランで勝利を収めた。昨年プロ入りした金丸夢斗が2回無失点5奪三振の力投で勝利投手になり、一次ラウンドC組の1位通過を決めた。主力を休ませたチェコ戦は七回まで0-0という投手戦になったが、八回に均衡を破る9点を挙げ、投げては相手打線を2安打に抑え零封した。

チーム力の高さ
 1次ラウンドは得失点差25点(ドミニカ共和国に次ぐ2位)、チーム打率3割1厘(同2位)、同防御率2.12(プエルトリコ、カナダに次ぐ3位)。チーム力の高さを見せつけて、連覇への視界は良好だった。準々決勝のベネズエラ戦は、ロナルド・アクーニャJr.と大谷の先頭打者本塁打の応酬で幕を開けた。1-2で迎えた三回、先頭打者の源田壮亮が四球を選び、若月健矢が手堅く送る。大谷の申告敬遠のあと、12打数無安打の近藤健介に代えてスタメンに起用した佐藤輝明が適時打二塁打を放ち、試合を振り出しに戻す。そして負傷した鈴木に代わった森下翔太が低めの変化球を泳ぎながら巧みにすくい上げる。打球角度30度で上がった打球速度170km/hのボールは118mの飛距離を計測し、5-2とリードを広げた。

被弾で形勢逆転
 井端采配がズバリと的中したここまでは理想的な展開だったが、好事魔多し。四回の下位打線でつくった一死一・二塁という好機で、大谷と佐藤が連続三振に倒れたのが、悪い予兆だったか――。五回には隅田知一郎が2ランを被弾、六回には伊藤大海が逆転3ランを浴び、形勢は逆転した。そして八回には種市篤暉の牽制悪送球で致命的な1点を失った。

救援実績十分の投手の不在
 今大会でWBC初選出となった隅田も種市も一次ラウンドでは好投した。前者は韓国戦と豪州戦に1イニングずつ投げ無失点(計5奪三振)。後者は豪州戦で3回無失点(奪三振7)。だが決勝トーナメントでは苦しい投球となった。隅田は1年目に救援経験はあるが、2年目(2023年)以降はすべて先発登板。種市も19年に救援登板の実績があるが20年以降は先発に従事。痛恨の一撃を浴びた伊藤も23年以降は先発に専念している。試合の途中から登板することへの備えが万全だったのかどうか――。2月に相次いでケガにより出場辞退をした石井大智、平良海馬、松井裕樹といった救援実績のある投手の不在が影を落とした格好だ。次回への教訓となるだろう。

二度目の連覇へ 第6回WBC

優勝候補の一角
 前回大会のディフェンディングチャンピオンの日本は、過去最多の9人(2月4日時点)のメジャーリーガーを擁し、連覇を狙う。昨年のワールドシリーズで3勝を挙げ、MVPに輝いた山本由伸。MLB史上6人目の2年連続50本塁打以上を達成した大谷翔平を投打の柱に、世界でも屈指の人材を招集した。野球という競技が失点をいかに少なくし、いかに多くの得点を挙げるかという特性――スポーツ自体がそうなのだが――から考えると、今大会でもベースボールの母国アメリカや中南米の野球強国と並び優勝候補の一角であることは違いない。そのなかで勝者と敗者を分けるものはなんだろうか――。

犠打が勝負の分水嶺に
 「侍ジャパン、WBCでV奪還」で触れたが、前回大会は攻撃面では緻密さとパワーを両立し、投手力と守備力にも秀でた「トータル・ベースボール」での戴冠だったが、スモール・ベースボールも光った。準決勝のメキシコ戦、頼みの綱の山本が打たれ、3-5で迎えた八回。無死一・二塁というチャンスをつくると、栗山英樹監督は源田壮亮に送りバントのサインを出すも二度失敗。しかし栗山監督は迷わずスリーバントを指示する。「サインを出した瞬間、サードコーチャーのカズ(白井一幸)が一瞬、びっくりした表情を見せた」と自著『監督の財産』で述べている。結果的に犠打の名手はスリーバントを成功させ、山川穂高の犠飛のお膳立てをした。1点差に迫った日本は最終回に劇的なサヨナラ勝ちを演じた。犠打の成否は勝負の分水嶺になったといえる。

日本のお家芸の強み
 日本は第4回大会の初戦から14試合連続でアーチをかけていて、長打力ではトップクラスだ。今大会もMLBで2度キングになった大谷を筆頭に、NPBでのキング実績のある佐藤輝明、村上宗隆、岡本和真、近藤健介がいる。本塁打は”野球の華”であるし、一発で戦況を変える魔力を持っているが、1点を争う試合展開では日本のお家芸といえる緻密なプレーの重みが増す。それは米国や中南米の野球強国にはない日本の強みであり、負ければ終わりというトーナメント方式の戦いを勝ち抜くために必要な戦術である。

井端監督の采配に注目
 思い起こせば、第2回大会決勝の韓国戦。延長十回のイチローの勝ち越し適時打は、無死一塁から稲葉篤紀の犠打でチャンスを広げたものだった。選手としてWBCを戦った経験があり、WBCとは何かを肌感覚で知悉している井端弘和監督が二度目となる連覇に向けて、どのような采配を振るうのか──。大いに注目だ。

余談
 栗山元監督は、指揮官に求められる最も重要なエッセンスは判断が遅れて選手を迷わせないことだと説く。前述の源田のスリーバントも「間髪を容れずに出すべきサインだった」(同書)と振り返る。日本が準決勝で敗れた第3回大会(2013年)のプエルトリコ戦。0-3で迎えた八回、三塁打を放った鳥谷敬が井端の適時打で生還し、2点差に迫る。続く内川聖一も右前打で出塁し、一死一・二塁とチャンスは広がった。次打者・阿部慎之助のとき、二塁走者・井端がスタートを切る構えを見せたが帰塁。一塁走者・内川もスタートを切っていたので挟殺され、チャンスは潰えた。重盗かエンドランか――。あるいは第2ラウンドのオランダとの2度目の対戦で1イニング2本塁打を放っていた4番阿部の打棒に託すのか――。難しい場面ではあった。山本浩二元監督に迷いがあり、それが選手に伝播した感がある。井端監督もこの苦い経験を糧として、”選手を迷わせない采配”を肝に銘じているだろう。