ソフトバンク、2年連続13度目の日本一

パ・リーグ最多タイの頂点
 史上初の第1戦から3試合連続の延長戦となった今シリーズは、ソフトバンクが4連勝で一昨年の雪辱をした。南海、ダイエー時代を含め、西武(西鉄を含む)と並びパ・リーグ最多タイの13度目の頂点に2年連続で立った。小久保裕紀監督は初めてみずほPayPayドームで胴上げされた。DeNAは先制された第1戦は追い付き、同様の第2戦も逆転するが及ばず。第3戦と第4戦は先制するも逆転負け。全試合2点差以下の接戦だったが、ソフトバンクのしぶとさと強かさに屈した。

勝敗の分岐点
 第1戦で競り負けたDeNAは、タイに持ち込み敵地へ乗りこみたかっただろう。その目論見通りに事は進みかけた。第2戦、0-2で迎えた八回、筒香嘉智が松本裕樹から起死回生の逆転3ラン。第1戦に続きソフトバンクの中継ぎの大黒柱を攻略し、後は九回を抑えれば勝利を手中に収めることができるという後攻めの理想的な展開に持ち込んだ。それに待ったをかけたのが山川穂高だ。第1戦(結果は三振)に続き代打で登場。守護神ショーン・レイノルズから一昨年の日本シリーズでの16打席連続無安打の鬱憤を晴らすかのような場外弾を放ち、試合を振り出しに戻した。ギリギリの柵越えでも場外弾でも本塁打には違いがないが、この途方もない値千金の一打はDeNAの首脳陣や選手たちの度肝を抜き、ソフトバンクの底力を強烈にアピールした。その潜在的なパワーが延長十回、レギュラーシーズンで本塁打ゼロ、通算でも1本塁打の川村友斗の勝ち越し弾を引き寄せたのだろう。横浜の夜空に消えたアーチが今シリーズの勝敗の分岐点だった。

明暗を分けた采配
 今シリーズの明暗を分けた采配は第4戦の四回裏の攻防だった。2-0とリードしたDeNAは二死二塁でソフトバンクの主砲・栗原陵矢を申告敬遠し、5番山本祐大との勝負を選んだ。同点の走者を自ら出す相川采配は消極的と思われたが、第2戦と第3戦で九回に追い付かれ、ソフトバンクの驚異的な粘りを見せつけられたDeNAとしてはやむを得ない選択だったのかもしれない。しかし、その消極策が裏目に出る。山本祐は無失点に抑えられていた先発・平良拳太郎から右翼線に2点三塁打。続く柳田悠岐の中前打で勝ち越し。遊撃手の守備位置を二塁ベース付近にするDeNAのシフトの術中にはまり、第3戦まで13打数2安打(打率1割5分4厘)で打点がなかった柳田を6番に下げ、山本祐を5番に置く小久保采配がズバリ的中した。

冴え渡る小久保采配
 一昨年の日本シリーズとは対照的に今シリーズは小久保采配が冴え渡った。動いても動かなくても――。第2戦の延長戦での川村の打席。第1戦に代打で登場し、貴重な追加点となる犠飛を打った柳町達が残っていたが代えなかった。勝負どころでの代打として温存しておく作戦だったのか。試合後の勝利監督インタビューでこう語った。「我々ベンチの中もファンの皆様もまさかと思った本塁打」。第4戦、逆転した直後の五回。二死一塁で牧秀悟を迎えたところで、好投していた先発・前田悠伍から新人・鈴木豪太へスイッチ。西武黄金期の森祇晶監督を彷彿とさせるような”石橋を叩いて渡る”采配。一昨年の轍は踏むまいという強固な意志を感じさせた。鈴木豪は期待に応え、第2戦から3試合連続で無失点で切り抜けた。

NPB最強の証明
 レギュラーシーズンでチーム失策が12球団最少(53個)だったソフトバンクの堅守は日本シリーズでも健在だった。今シリーズの守備率は10割。19年に同球団がつくった4試合シリーズでの最高守備率9割9分3厘を抜き、新記録を樹立したことからも窺えるように、今シリーズのソフトバンクは隙がなかった。心の隙も――。近藤健介と栗原の100打点コンビが打点ゼロでも、救援陣で全幅の信頼を寄せる松本裕が防御率15.43でも負けることはなかった。DeNAは投手を使いきった感があるが、ソフトバンクはレギュラーシーズンで12勝の大津亮介の登板機会はなかった。どのような状況でも勝ちきれる強大なチーム力。それは分厚い選手層と選手個々の競争意識の高さに起因するものだろう。チームの潜在能力を遺憾なく発揮し、NPB最強であることを証明した。

表彰選手
 最高殊勲選手賞は今季ブレイクした正木智也が受賞。全試合にトップバッターとしてフルイニング出場。第1戦での日本シリーズ初安打を皮切りに毎試合安打を放ち、16打数7安打(打率4割3分8厘)2打点。第2戦の先制、第3戦のサヨナラの2本のアーチを描いた。敢闘選手賞は第3戦に先発し、7回無失点の東克樹。一昨年の再現はならなかったが、走者を出しても要所を締め、日本シリーズ新記録の5度の併殺を完成させる快投を演じた。優秀選手賞には杉山一樹、山本祐大、庄子雄大が選ばれた。杉山は全試合に登板し1勝3S。無失点でチームのすべての勝利に貢献した。山本と庄子も全試合に出場し、ともに今シリーズ最多タイの3打点を挙げた。前者は3試合でスタメンマスクを被り、投手陣をリード。打っても3割6分4厘の高打率を残した。後者は打率2割ながら第1戦と第2戦の躍動でチームを勢いづけた。

日本シリーズ2026展望

2024年の再戦
 今年の日本シリーズは2024年の再戦となった。ソフトバンクはリーグ制覇から敗れ去ったリベンジを狙う。一方、レギュラーシーズン3位から日本一に輝いたDeNAはその再現を目指す。ソフトバンクはCSファイナルステージは全試合逆転勝ちで3連勝。DeNAはCSファーストステージから6連勝と両チームとも波に乗っている。一昨年は日本シリーズ12連勝中だったソフトバンクにDeNAが挑む構図だったが、今シリーズは立場が変わる。その力学の変化がどのような結果をもたらすのか――。

チームスタッツ比較
 DeNAの総得点(557)はリーグトップ。チーム打率と本塁打はリーグ覇者と並びトップタイ。三冠王・佐藤輝明を擁した阪神より攻撃力は上回るが、ソフトバンクの総得点はリーグ2位日本ハムに100点以上の差をつける707。爆発力を秘めている。投手力はDeNAのチーム防御率は3.27(リーグ3位)。二桁勝利を挙げたのは東克樹だけである。一方、ソフトバンクの同防御率は2.88(リーグ2位)。今季飛躍した前田悠伍、松本晴、大津亮介の12勝トリオに加え、上沢直之も二桁勝利をマークしていて、先発投手陣の層も厚い。

今シリーズのポイント
 今シリーズのポイントはDeNAの先発投手陣がソフトバンク打線を抑えられるかだろう。DeNAの先発投手はポストシーズンゲームに無類の強さを発揮する。24年第4戦のアンソニー・ケイ、第5戦のアンドレ・ジャクソン。今年のCSファイナルS第1戦の平良拳太郎、第3戦の新人・片山皓心。常時この投球ができれば、シーズンで二桁勝利を挙げられるというような快投をする。CSの全試合で先制点を奪い、先発投手の好投を引き出した試合運びで活路を開きたい。

DeNAのキーマン
 キーマンとして度会隆輝を挙げる。今季は3年目で初めて100試合以上に出場し規定打席に到達。主にリードオフマンとして、リーグ8位の2割7分4厘をマーク。ソフトバンクのトップバッターには及ばないものの9本塁打を放ち、長打率は.380。24年のシリーズではリードオフマンの桑原将志が 日本シリーズ新記録となる5戦連続打点に加え、6試合のシリーズでは最多タイとなる9打点を挙げ、MVPを受賞。CSでMVPを受賞した牧秀悟の勝負強さを活かすためにも度会の出塁が重要になる。

ソフトバンクのキーマン
 キーマンに近藤健介を挙げる。15年目の今季は得点(95)、安打(151)、本塁打(32)、打点(108)、長打率(.569)でキャリアハイを更新。チャンスメーカーとポイントゲッター、一人二役をこなせる稀有な存在だ。前回の対戦では右足首のケガで第1戦は代打で出場、第2戦は欠場。第3戦以降はスタメン出場したが、チームは4連敗。今シリーズに懸ける思いは人一倍強いだろう。

日替わりヒーローに期待
 戦力で劣勢のDeNAはCSファイナルSでプロ入り初アーチをかけた新人・成瀬脩人のような日替わりヒーローの誕生に期待したい。CSでは12打数無安打(8三振)の筒香嘉智は今季、牧に次ぐ20本塁打を放ち、その長打力は貴重だ。24年の対戦では優秀選手賞を受賞した験も担ぎたい。シーズン途中でソフトバンクから移籍した尾形崇斗は自己最多の7勝(3敗)を挙げた。古巣相手に恩返しの投球をしたいところだ。CSファイナルS第4戦で代走での出場から守備につき、土壇場で逆転の2点打を放った三森大貴も古巣に一撃を見舞えるか。日本シリーズ初采配となる相川亮二監督の手綱さばきにも注目だ。