日本シリーズ2025展望

対照的な戦い
 今年の日本シリーズはリーグ制覇をしたチーム同士の対戦となる。阪神はレギュラーシーズンを独走し、CSファイナルステージも3連勝。ソフトバンクはレギュラーシーズンでは日本ハムの驚異的な粘りに苦戦し、CSファイナルステージも3連敗した後の第6戦で日本ハムをかろうじて振り切った。両チームは対照的な戦いで日本シリーズにコマを進めた。これまでソフトバンクの前身球団時代を含めて3度の対戦があり、1964年は南海、2003年はダイエーがいずれも4勝3敗で阪神を破り、14年はソフトバンクが4勝1敗で制している。

リーグトップの投手力
 両チームともリーグトップの投手力を誇る。阪神のチーム防御率は2.21で、二桁勝利投手が2人。ソフトバンクは同2.39で、12勝以上の投手が4人。先発陣ではソフトバンクに分があるが、ソフトバンクはレギュラーシーズンとCSでかなり消耗している印象を受ける。阪神がその隙を突ければ、もつれた展開になりそうだ。

序盤からの仕掛け
 両チームとも救援陣も強力だ。ソフトバンクの”勝利の方程式”(松本裕樹、藤井皓哉、杉山一樹)は、杉山がクローザーに定着してから優勝決定時まで13勝負けなし。一方、阪神の”勝利の方程式”(石井大智、及川雅貴、岩崎優)は、優勝決定時まで21勝1敗2分け。先発投手から点を奪って、相手の勝利の方程式の出番をなくす展開に持ち込みたいとの思惑から両チームとも序盤から積極的に仕掛ける展開が予想される。

今シリーズのポイント
 ソフトバンクは交流戦を制し(12勝5敗1分け)、阪神は8位タイ(8勝10敗)だったが、交流戦のチーム防御率をみると、ソフトバンクの2.20に対し阪神は1.99。阪神の投手陣がパ・リーグの打者を抑えられなかったわけではない。交流戦での平均得点はソフトバンクの4.4に対し阪神は3.2で、阪神の攻撃陣がパ・リーグの投手を打てなかった傾向が見て取れる。阪神の攻撃陣がソフトバンクの投手陣を打ち崩せるかが今シリーズのポイントになるだろう。

注目選手
 注目選手は阪神は佐藤輝明、ソフトバンクは周東佑京。佐藤輝は本塁打と打点のタイトルを獲得し、交流戦でも6本塁打。近年は22年のヤクルト・村上宗隆、昨年の山川穂高と主砲が極度の不振に陥り、チームが敗れるケースが目につく。佐藤輝のバットがチームの浮沈のカギを握る。周東は3年連続4度目の盗塁王に輝き、盗塁成功率も8割9分7厘(35盗塁で盗塁刺4)とキャリアハイの数字を残した。23年の近本光司、昨年のDeNA・桑原将志と2年連続でトップバッターが日本シリーズの最高殊勲選手賞を受賞をしている。ソフトバンクの打順は流動的だが、周東がリードオフマンとして起用されれば、その役割は重大だ。

初戦に占めるウエイト
 阪神が日本一に輝いた23年は、日本シリーズ仕様の投手起用が功を奏した。藤川球児監督は今シリーズでもそれを踏襲するのか。それともレギュラーシーズン通りの戦法で勝機を見出そうとするのか。昨年は2連勝後のまさかの4連敗で一敗地に塗れた小久保裕紀監督が率いるソフトバンクはリベンジに燃えている。その執念が実を結ぶのか。阪神は23年の第7戦に続く連勝とし、日本一の勢いを持続させたい。ソフトバンクは昨年の第3戦から4連敗中という悪い流れを断ち切りたい。初戦に占めるウエイトが過去の日本シリーズよりも大きくなりそうだ。

余談
 ラッキボーイとして注目しているのが川瀬晃だ。「ソフトバンク、最下位からの逆転V」で触れたように、レギュラーシーズンではソフトバンクの救世主的な存在だった。CSファイナルステージの第6戦でも勝ち越し打を放ち、日本シリーズ進出に大きな役割を果たした。10年目の今季は、打席、安打、打点、四球でキャリアハイを記録し、プロ初を含む2本のアーチをかけた。内野の全ポジションをこなし、非常にユーティリティーの高い選手でもある。今シリーズでも要所で大きな仕事をやってのけそうな気配が漂う。阪神にとっては要注意な選手だ。

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