オリックス、4連覇潰える

リーグ4連覇潰える
 9月10日、京セラドームでのロッテ戦に1-4で敗れ、オリックスはリーグ4連覇が潰えた。杉本裕太郎の本塁打で先制するも、6回以降無安打に抑えられ逆転負け。今季を象徴するような貧打に苦しんだゲームだった。(記録は9月27日現在)

5位でCS出場逃す
 開幕直後はチーム状態が上がらず、何度か最下位に沈む。4月24日には貯金を2つ作り、首位ソフトバンクに2.5ゲーム差と迫ったが、これが今季のオリックスのクライマックスだった。6月26日にソフトバンクに敗れ、ゲーム差をその時点で今季最大の15.5に広げられ、自力優勝が消滅。だが7月9日からのソフトバンクとの2連戦に連勝。最大9あった負け越しがなくなり、首位まで12.5ゲーム差の3位に浮上。後半戦での反転攻勢が期待されたが、8月1日には借金は二桁に膨らんだ。シーズンの大詰めとなる9月。13日からの京セラドームでの直接対決4連戦に全敗。20日にみずほペイペイドームでも敗れ、再び本拠地に戦いの場を移した23日に小久保裕紀監督の胴上げを許すという屈辱を味わった。25日に楽天が勝利したことにより、今季の5位が確定。CS出場も逃した。

ソフトバンクに次ぐ投手力
 昨年、山本由伸がポスティングでMLBドジャースへ、山﨑福也はFAで日本ハムへ移籍。昨季2人でチーム勝利数の約31%にあたる27勝をマークした先発投手が抜け、それをどう補うかが今季のオリックスの課題だった。ただ昨季のチームスタッツをみると、防御率はリーグトップの2.73、失点はリーグ最少の428。今季の防御率はリーグ2位の2.82、失点は2番目に少ない435。エースの宮城大弥が左大胸筋の筋損傷で約1カ月半戦線離脱するという不測の事態はあったが、投手力に関しては昨季から大幅に低下したわけではなかった。問題は攻撃陣である。昨季のチームスタッツは、打率.250、109本塁打、長打率.369はいずれもリーグトップ、得点はリーグ3位の508。今季は打率.235、67本塁打、長打率.325、375得点はいずれもリーグ5位。チームの得点は昨季より100点余り少なく、攻撃力の低下が今季の低迷の主たる要因であった。

主力打者の打点が大幅減少
 昨季チームトップの135試合に出場した中川圭太はケガもあり、今季は出場試合数が激減。昨季の55打点から16打点と減少した。先日引退を発表したマーウィン・ゴンザレスは腰痛の影響もあり、昨季38打点→今季2打点。ルーキーイヤーの昨季に22打点を挙げた茶野篤政だが、今季は2打点。昨季の首位打者・頓宮裕真は49打点→30打点。昨季と今季のチームの打点王・森友哉は、出場試合数は昨季とほぼ同じだが本塁打が半減し、64打点→46打点。ホップ・ステップ、今季がジャンプのシーズンだった3年目の野口智哉は19打点→1打点。2021年のキング・杉本裕太郎は41打点→27打点。主力打者が打点を大幅に減らした。紅林弘太郎とレアンドロ・セデーニョは昨季とほぼ同数の打点、広島からFA移籍した西川龍馬はチーム2位の45打点をマーク。前半戦好調で球宴にも監督推薦で選ばれた(ケガで辞退)太田椋は7打点→39打点と伸ばしたが、減少分を補うことはできなかった。二桁本塁打を放った選手も昨季の5人から2人に減り、パ・リーグ覇者とのチーム得点の差は200点余りある。捲土重来にはチームの攻撃力のアップが最重要課題だ。

ゼロからのチームづくり
 9月に入り、T-岡田、安達了一、比嘉幹貴、小田裕也といったベテラン勢が相次いで引退を発表した。中嶋聡監督は就任後、既存をベースに独自色を施し、チーム力をアップしたが、来季はゼロからのチームづくりが必要となる。リーグ3連覇は球団史上、1967年~69年の西本幸雄監督、1975年~78年の上田利治監督の2人しか達成していない。球団も中嶋監督の手腕は高く評価しているだろう。来季も続投し、指揮官としての真価を見せてほしい。

広島、6年ぶりのVへ

FA移籍した西川の穴

 今季の広島の課題は、昨季打率3割5厘(リーグ2位)、127安打、56打点といずれもチームトップの成績を残した西川龍馬がオリックスにFA移籍し、その穴をどう(誰が)埋めるかということだった。昨季は外野手で100試合以上出場した選手は秋山翔吾(114試合)、西川(109試合)、野間峻祥(104試合)の3人。今季外野手での出場は、秋山は102試合、野間は86試合、末包昇大は49試合、大盛穂は44試合、内野手登録の上本崇司は37試合。西川の後釜に座った選手はなく、新井貴浩監督は主に末包、大盛、上本を起用している。(記録は8月26日現在)

昨季との攻撃スタッツ比較

 攻撃のスタッツを昨季と比較すると、チーム得点は昨季493→今季331で共にリーグ5位。チーム打率は2割4分6厘→2割3分9厘で共にリーグ4位。チーム本塁打は96本塁打(同4位)→45本塁打(同6位)。長打率は.357(同4位)→.320(同6位タイ)。出塁率は3割4厘(同5位)→2割8分8厘(同6位)。期待の新外国人選手、マット・レイノルズとジェイク・シャイナーは前者が2試合、後者が12試合の出場に留まり、チームの攻撃スタッツ上でも西川の穴は埋めきれていない。

チーム防御率トップの投手陣

 そういうチーム状態でもペナントレースで先頭を走っているのは投手陣に負うところが大きい。チーム防御率は昨季3.20(同4位)→今季2.27(同1位)と1点近く向上している。2018年の最多勝と最高勝率のタイトルホルダーで、5年連続で開幕投手を務めていた大瀬良大地が昨季は6勝11敗(防御率3.61)と精彩を欠いた。昨秋に自身3度目の右肘の手術をし、復活のシーズンである今季、6月7日に無安打無得点試合を達成。リーグトップの防御率(1.38)を残し、5勝3敗。昨季は二桁勝利を挙げた先発投手は11勝の床田寛樹だけだったが、今季はすでに床田と森下暢仁がマーク。開幕投手の九里亜蓮、昨季4年ぶりに1軍のマウンドに上がったアドゥワ誠が6勝と続いている。

絶対的な守護神

 チームのセーブ数も昨季46→今季37で共にリーグトップ。昨季は入団以来2年連続で30セーブを達成していた守護神、栗林良吏が3月開催のWBCでは腰の張りで大会途中に離脱。4月に登録抹消されるなど、守護神の座を矢崎拓也に譲った。今季はリーグトップタイの34セーブ(防御率0.98)を挙げ、ルーキーイヤーにマークした自己最多(37セーブ)を上回るペースだ。栗林が絶対的な守護神としての働きをすることが6年ぶりの覇権奪回への必須要件になる。

これからが正念場

 昨季は7月27日に2019年以来となる10連勝で首位に浮上するも、翌日の阪神との首位攻防戦に敗れて2位に転落。その後首位に返り咲くことはなく、最終的には11.5ゲーム差がついた。今季は8月1日のDeNA戦に勝利し、首位に再浮上。8月以降の首位は、リーグ3連覇した18年以来と報じられた。これからが広島にとって正念場となる。

2024/8/30記