ソフトバンク、3試合連続サヨナラ

球団としては2度目

 ソフトバンクがゴールデンウイーク最中の西武戦で、プロ野球タイ記録となる史上16度目の3試合連続サヨナラ勝ちというドラマを演じた。同一カード3連戦では史上5度目、球団としては南海時代の1961年以来2度目となる。

口火を切った川瀬晃

 今回のサヨナラ劇の口火を切ったのは川瀬晃だ。4月27日は代走から途中出場し、延長十回に一死一・三塁の場面で放った右越安打は今季初打点かつプロ入り初の劇的打となった。同月28日は代打で途中出場。延長十二回、一死二塁で打席が回り、西武ベンチは敬遠策。その後満塁となり、打者・柳田悠岐のときに捕逸で決着。同月29日は野村勇の代打で先頭打者として四球を選び、柳田の逆転3ランのお膳立てをした。

主役と脇役がスクラム

 川瀬は大分商から15年ドラフト6位で入団。昨季内野の全ポジションを守り、初めて100試合以上に出場。打者としては、今宮健太に次ぐ、チーム2位タイの18犠打を決めた。プロ9年目で通算本塁打ゼロというのが川瀬のプレースタイルを如実に表している。今季のソフトバンクは、中心選手が派手に立ち回り、その脇を固めるプレイヤーもいぶし銀の働きをしている。主役と脇役ががっちりとスクラムを組んでいるところに強さがある。

福岡移転後2500勝

 3試合連続のサヨナラ劇は、89年の福岡への球団移転後の2500勝というメモリアルな勝利になった。加えて現役ドラフトで日本ハムから加入し、九回を三者凡退に抑えた長谷川威展にプロ初勝利をプレゼント。破竹の勢いのチームはすべてがうまく回っているようだ。

61年はリーグ制覇

 61年の南海は、名将・水原茂監督が就任して1年目の東映とシーズン終盤までデッドヒートを繰り広げた。20勝を挙げていた杉浦忠が9月に右腕の動脈閉塞で切開手術を受け、戦線離脱。一時は首位を陥落したが、経験と老練さで新鋭チームをかわし、鶴岡一人監督は宙を舞った。小久保裕紀監督が生まれるちょうど10年前のことだ。小久保監督がこのリーグ制覇を知っているにせよ知らないにせよ、勝率7割台で首位を独走するチームに確かな手応えを感じているだろう。

山川穂高、1試合で満塁弾2本

史上3人目の快挙

 ソフトバンク・山川穂高が古巣の本拠地、ベルーナドームに初登場した4月12日、試合前のスタメン発表時に猛烈なブーイングが起きたことがネットの動画で伝わった。不祥事によって西武を去った山川への風当たりの強さは相当なものだったが、その翌日のゲームの六回(第4打席)と八回(第5打席)で満塁弾を放ち、古巣のファンへの恩返しと同時に新生・山川穂高を強烈にアピールした。1試合で2本の満塁弾は、1951年の飯島滋弥(大映)と2006年の二岡智宏(巨人)に続いて史上3人目となる。2打席連発は第3、4打席で放った二岡以来2人目で、パ・リーグでは初の快挙だ。

バットで取り戻す

 昨年5月、知人女性への強制性交の疑いで書類送検され、同年8月に不起訴処分(嫌疑不十分)となった。西武球団からは無期限の公式試合出場停止処分を受け、昨季の出場は17試合にとどまったが、「故障者特別措置」による登録日数の加算でFA権を取得。4年契約の総額12憶円+出来高払いで、新天地に活躍の場を求めた。この日、1本目の満塁弾を放ったあと、ベンチで両手でバットを握り締め、感謝を表すような仕草を見せたが、今季に懸ける思いの強さが現れたシーンだった。自らの蹉跌はバットで取り戻すしかない。それは野球選手の宿命であるだろう。

豪打復活で打線牽引

 本塁打を放った後のお馴染みの“どすこいポーズ”はチームが変わっても踏襲するようだ。4番に山川がどっしりと座り、前後を柳田悠岐と近藤健介が固める和製クリーンアップは12球団随一といっていい。この日は第3打席を含めて計3度、満塁で山川に打席が回った。このゲームのように、山川の前に走者をため、山川が還す得点パターンを確立できれば、チームの得点力は格段に増す。西武時代に本塁打王に3度、打点王に1度輝いたスラッガーへの小久保裕紀監督の期待も大きい。昨季は本塁打はゼロに終わったが、豪打復活で4年ぶりにリーグ制覇を狙うチームを牽引する。