巨人6000勝

■開幕戦で決める
開幕戦での阪神との伝統の一戦を制し、プロ野球記録となる球団通算6000勝を挙げ、今季最高のスタートを切った巨人。原監督は2007年の5000勝に続き、球団のメモリアルな勝利を指揮官として飾った。昨季レギュラーシーズンの最終戦となるヤクルト戦で、ポスティングでブルージェイズに移籍した山口俊を先発に起用し必勝態勢で臨んだが、延長サヨナラ負けを喫し、6000勝は持ち越しとなっていた。メモリアルな勝利を今季の開幕戦にとっておいたわけではないだろうが、そつなく決めるところが球界の盟主たる所以だろうか。WBCという短期決戦の国際大会を制した経験と実績がある原監督の強い勝負運と、1934年の球団誕生以来の巨人の球歴があったからこそ為せる業だろう。

■巨人のDNA
巨人の6000勝の足跡をたどるため、古い新聞を繰っていると、V9が始まった昭和40年の2000勝達成時に、巨人の事実上の初代監督・藤本定義(当時は阪神監督)の回顧談が掲載されていた。「あの当時は“我々巨人軍が勝たなければ、プロ野球は盛んにならない”というので、監督のわたしも、選手たちも、一生懸命だった」(同年7月26日付読売新聞)。V9という偉業に代表される数々の輝かしい“歴史と伝統”を築き上げたのは、プロ野球最古の球団である巨人のDNAに脈々と息づく、この矜持と精神ではなかっただろうか。

■独走態勢の巨人
7月27日現在、19勝9敗2分と7割近い勝率で独走態勢に入りつつある巨人。シーズンが始まってちょうど1/4の試合数を消化した段階だが、最高のスタートを切った巨人が最高の結果で今季を締め括る気配が漂う。

巨人6000勝の足跡

勝利数 年月日 スコア 相手
順位 勝利投手 球場 監督
1000勝 1952年8月8日 7-0 広島
(1) 藤本英雄 旭川 水原茂
2000勝 1965年7月25日 2-1 中日
(1) 宮田征典 中日 川上哲治
3000勝 1979年4月9日 8-2 中日
5 堀内恒夫 後楽園 長嶋茂雄
4000勝 1993年5月30日 4-3 中日
3 桑田真澄 東京ドーム 長嶋茂雄
5000勝 2007年5月2日 5-3 中日
1 林昌範 ナゴヤドーム 原辰徳
6000勝 2020年6月19日 3-2 阪神
? 菅野智之 東京ドーム 原辰徳

※順位は該当シーズンの順位。括弧付きは日本シリーズ制覇

<豆知識>
巨人の球団初勝利は、昭和11年7月3日のリーグ結成記念東京大会で大東京を10-1で破って挙げている。この試合の勝利投手は畑福俊英(はたふく・としひで)。通算41勝を記録しているが、巨人在籍時の勝利はこのときだけである。

開幕戦の投手の本塁打

■開幕戦の投手のアベック弾

コロナウイルス禍で3カ月遅れた異例のシーズンの開幕戦は波乱含みの展開になった。開幕投手の阪神・西勇、広島・大瀬良が本塁打を放ち、同一年のシーズンの開幕戦で2人の投手がアーチをかけるのはプロ野球史上初の快挙。開幕戦での投手の本塁打は2008年の川上憲伸(中日)以来で、12、13人目(14、15本目)。西勇は12年目、大瀬良は7年目でのプロ初本塁打だった。

■82年ぶりの快打

西勇は巨人のエース菅野から今季のチーム初安打となるソロ。次の打席でも適時二塁打を打ち、2打数2安打2打点と躍動。6回4安打1失点で勝ち投手の権利を残して降板したが、救援が打たれて惜しくも開幕戦の初白星を逃した。阪神の投手の開幕戦での本塁打は1938年春の御園生崇男(みそのお・たかお)以来82年ぶり。投手として127勝、打者として506安打を記録した1リーグ時代のレジェンドにスポットライトを当てる快打になった。

■大瀬良デイ

大瀬良は五回に同点適時打、七回には犠打、九回に自らの完投勝利をアシストする2 点本塁打を放つなど大技小技が冴え、3打数2安打3打点。投げては九回1失点と、まさに“大瀬良デイ”という趣で、敵将のラミレス監督が脱帽するのも無理はなかった。大瀬良は「いつかは打ちたい」と思っていたそうだが、プロに入って投手専業になった選手も高校時代はほとんどがエースで中心打者。400勝投手の金田正一は38本の本塁打を放っているし、打撃センスに恵まれた投手は多い。

■意外性のある打棒

昨年の日本シリーズでソフトバンクに4連敗した巨人・原監督が、「(セ・リーグも)DH制を使うべき」との持論を展開した。DHが入る強力打線と常に対戦していることがパ・リーグの投手陣を逞しく育てているというわけだ。テレビやラジオの放送では、投手の打点を「自らを助ける一打」と表現されることが多い。いにしえより「天は自ら助くる者を助く」というし、投手の意外性のある打棒もプロ野球の魅力ではないだろうか。

■西勇が続投していれば…

開幕戦で本塁打を放った投手の勝ち負けをみると(下表を参照)、11勝1敗(勝ち負けつかずが3試合)。本塁打を打ったから気分良く投げられるのか、投球内容がいいから打棒も光るのか(自分で打つしかないという悲壮な決意の本塁打もあったかもしれないが)。そこに西勇が続投していれば…という、”If”がある。

開幕戦で本塁打を打った投手

年度投手名所属相手打点勝敗
1938春御園生崇男タイガース阪急1
1948別所昭南海阪神2
1949白木義一郎東急巨人1
1954西村貞朗西鉄東映2
1962金田正一国鉄大洋1
1965金田正一巨人中日1
1968皆川睦男南海阪急1
1969木樽正明ロッテ南海1
1971平松政次大洋ヤクルト1
1975平松政次大洋巨人3
1980池谷公二郎広島阪神1
2004べバリンヤクルト横浜1
2008川上憲伸中日広島1
2020西勇輝阪神巨人1
2020大瀬良大地広島DeNA2

出所:スポーツニッポン

  • 太字の投手名はプロ初本塁打
  • 打点は本塁打での打点
  • 勝敗は投手の勝敗