ワーストの成績
昨年、東日本大震災から10年目となる節目のシーズンに日本球界に復帰した田中将大。2年契約で、NPB史上最高の年棒9億円プラス出来高払い(金額は推定)。田中将個人のファンクラブ「マー君クラブVIP」は10人限定の募集で、年会費180万円ながら受付開始から14分で完売になり、耳目を集めた。楽天ファンは2013年に無傷の24連勝で球団初のリーグ優勝と日本一に貢献したときのような神がかりな投球を期待しただろうが、NPB復帰1年目は4勝9敗。プロ入り後、ワーストといえる成績に終わった。
チームも失速
防御率3.01はチームトップ(リーグ5位)だったが、チームの貯金を5つ減らした。打線の援護に恵まれなかった面もあるが、東京五輪でのノックアウトステージ第1戦のアメリカ戦のように、自軍が先制しても逆転されるなど、勝負どころで痛打を浴びるシーンが目に付いた。石井一久監督にとっても田中将の成績は大誤算だっただろう。昨季、7月13日のソフトバンク戦で4勝目を挙げた後、東京五輪後に先発した10試合で、チームは8敗2分け。自身は4連敗に終わった。シーズン序盤には首位に立ったチームも、田中将の成績に歩調を合わせるように失速した。
被本塁打率に顕著な違い
今季は8試合に先発し4勝3敗(5月29日現在)。5月10日のロッテ戦では、日本球界復帰後の初完封勝利を飾り、防御率1.851(リーグ5位)と好調を維持している。昨季との顕著な違いは被本塁打率だ。昨季は0.98(155 2/3回で17本)と1試合(9イニング)にほぼ1本被弾していたが、今季はここまで0.46(58 1/3回で3本)と半減した。田中将も33歳になり、全盛期からは球威が落ちていることは否めないだろう。そこをMLBで培った投球術でどう補うか――。それが最大のテーマになる。
今季の楽天の浮沈がかかる
4月下旬から5月上旬にかけての楽天の球団新記録となる11連勝は田中将で始まり、田中将で終わった。連勝中、計3勝をマークし、投手陣を牽引。首位を走るチームを支えている。昨季は涌井秀章、今季は則本昂大に開幕投手の座は譲ったが、楽天投手陣の精神的な支柱であることは疑う余地はない。田中将自身が昨季の成績に忸怩たる思いを抱いているだろう。昨オフ、MLBに復帰する選択肢もあったが、楽天に残留し、リベンジする道を選んだ背番号「18」。今季の楽天の浮沈はその右腕にかかっているといっても過言ではない。