村上宗隆、最年少100本塁打

21歳7ヵ月での達成

村上宗隆(ヤクルト)が9月19日の本拠地・神宮球場での広島戦で通算100本塁打を放った。1989(平成元)年の清原和博(西武)を抜き、史上最年少となる21歳7ヵ月での達成となった。高校時代は清原同様、1年生で4番を任されるが、甲子園に5度出場し優勝2度、準優勝2度、ベスト4が1度の清原に対し、村上は唯一出場した1年夏に自身無安打で初戦敗退している。プロ入り後もルーキーイヤーからレギュラーに定着し、31本の本塁打を放ち、新人王を受賞した清原に対し、村上はプロ初打席初本塁打という離れ業を演じるも、1年目は6試合の出場で12打数1安打とプロの高い壁に阻まれた。

2年目に大ブレーク

2年目にはレギュラーに定着。全143試合に出場し、打率は2割3分1厘、184三振ながら36本塁打、96打点(共にセ・リーグ3位)を挙げ、高卒2年目以内の選手の打点の記録を塗り替えるとともに、本塁打では中西太(西鉄)に並ぶタイ記録となった。このシーズンはオールスターにもファン投票で選出され、新人王争いでもセ・リーグの新人最多安打記録をつくり、盗塁王を獲得した阪神・近本光司を僅差で制するなど、大ブレークを果たした。

3年目に”長足の成長”

3年目となった昨季。コロナ禍で開幕が6月にずれこみ、試合数も120試合に削減された異例のシーズンだったが、村上のバットは一層輝きを増した。3割7分(セ・リーグ5位)とプロ入り後初めて打率を3割に乗せ、28本塁打、86打点(共に同2位)をマーク。レギュラー1年目の19年に日本人選手シーズン最多三振記録をつくったことからも窺えるように、本塁打か三振かというイメージを払拭し、長打率を維持しつつ確実性を高めることに成功。19年比較で長打率は.481→.585、出塁率は.332→.427と大幅にアップ。三振数も184→115と激減、数字が大きいほど選球眼に優れ、バットに当てる能力が高く三振しにくい打者であるといえるBB/Kは0.40→0.76に向上。最高出塁率者賞を獲得し、ベストナインにも選ばれ、わずか1年で”長足の成長”を遂げた。

東京五輪で金メダルに輝く

日本代表の稲葉篤紀監督は東京五輪のメンバーに、昨季本塁打王と打点王を獲得した巨人・岡本和真ではなく、正三塁手として村上を選んだ。金メダルに輝いた侍ジャパンの一員として、全5試合に8番・三塁手として先発出場し、15打数5安打3打点。アメリカとの決勝戦で放った先制ソロがひときわ強く印象に残る。稲葉監督の期待に見事に応えた打棒で、五輪の正式競技で初の金メダル獲得に貢献度大だった。

6年ぶりのリーグ制覇へ

今季も終盤になり、ヤクルトは、阪神、巨人との激しい優勝争いの真っただ中にいる。4番に座る村上のバットにかかる高津臣吾監督の期待も自ずと大きくなる。9月26日の中日戦では今季100打点をマーク。21歳での到達は、岡本和が持っていた最年少記録を更新した。その岡本和との本塁打、打点部門でのタイトル争いも熾烈になっていくだろう。将来の侍ジャパンの4番と目される若きスラッガーが重圧に打ち克ち、東京五輪での金メダルに続き、チームの6年ぶりのリーグ制覇を手繰り寄せる打撃ができるかが大いに注目される。

2000試合目の”伝統の一戦”

巨人の1094勝835敗

5月15日の巨人対阪神(東京ドーム)の“伝統の一戦”は2000試合目のメモリアルゲームだった。巨人が5-3で勝ち、通算の対戦成績を1094勝835敗71分けとした。1936年(昭和11)年7月15日に名古屋・山本球場で初対戦以来、1959年のプロ野球初の天覧試合など、これまで数々の名勝負を演じてきた両チーム。巨人の原辰徳監督はプロ入り2年目の1982年、後楽園球場で行われた1000試合目の対戦に5番・三塁手として出場。2-1の五回に勝敗を趨勢を決める3ランを放っている。

阪神委縮“眠りネコ”

この試合で阪神は度重なるミスで自滅。翌日の朝日新聞(4月19日付)に「阪神委縮“眠りネコ”」という見出しの記事が掲載された。「ここ一番になると腰くだけになる『阪神症』は、いまに始まったことではない。(中略)『オレ一人でも』と、ガッツをむき出しにする選手が見当たらないことだ。阪神ファンには、藤村、村山の姿がただたまらなく懐かしく思い出されただけの巨人-阪神千試合目だったに違いない」と酷評を浴びた。

意地と意地との激突

2000試合目の対戦では、原監督は一回二死一、三塁、5番打者ジャスティン・スモークのところで重盗を敢行。九回には“一人一殺”の必死の継投を見せるなど、この試合にかける意気込みを示した。阪神も敗れはしたが、意地を見せた。五回にスモークに逆転3ランを浴びるも、六回以降巨人打線を零封。攻撃陣は九回に一死満塁のチャンスをつくり、最後まで食い下がった。新人・佐藤輝明は4番に座り、二塁打3本で3打点。チームの全打点を挙げる躍動を見せた。

優勝の行方を左右する” 猛虎魂”

1リーグ時代は東京対大阪という構図の下、プロ野球の覇権を争い、互角の対戦成績を残した。2リーグになってからは、阪神の巨人戦でのシーズン対戦成績の勝ち越しは、62年の2リーグ制下での初優勝時まで待たなければならなかった。86年~02年は17年連続で負け越すなど、対戦カード勝ち越しは07(平成19)年が最後と、“伝統の一戦”とはいえ、阪神には分の悪い状態が続いている。今季は6月18日の直接対決で阪神が勝ち、巨人は3位に後退。ゲーム差は8.0まで開いたが、8月29日に首位陥落。ゲーム差では巨人、ヤクルトを上回るも、勝率で3位に落ちた。シーズン序盤の阪神の勢いに陰りが見えている。今季の対戦成績は巨人の8勝7敗とほぼ互角に渡り合っているが、かつてチームの先輩たちがグランドで見せた“猛虎魂”をいかに持てるかが、優勝の行方を大きく左右するのではないか。