F西川、300盗塁へカウントダウン

史上30人目

昨季までに通算287盗塁を記録している日本ハム・西川遥輝(29)。今季は4月下旬に新型コロナウイルス陽性判定を受け、一時チームから隔離されたが、今月15日から戦列に復帰した。戦列を離れるまでに5盗塁、復帰後2盗塁を決め、今季7盗塁。史上30人目となる節目の数字にまでカウントダウンに入っている。

最多盗塁に3度輝く

2011年にドラフト2位で智弁和歌山から入団。公式戦初出場を果たしたシーズンの2012年には71試合の出場で7盗塁(盗塁刺0)をマーク。14年に43盗塁で初めて最多盗塁のタイトルを手中に収め、17年には39盗塁、18年には44盗塁で2年連続で同タイトルを獲得。特に18年は盗塁刺がわずか3、驚異的な盗塁成功率9割3分6厘を誇った。

盗塁成功率8割超えは5人

300盗塁以上記録した選手の盗塁成功率をみてみると、1位が広瀬叔功(南海)の8割2分9厘(盗塁596)。2位が呉昌征(毎日など)の8割2分5厘(同381)。3位が松井稼頭央(西武など)の8割1分9厘(同363)。4位が赤星憲広(阪神)の8割1分2厘(同381)。5位が木塚忠助(近鉄など)の8割8厘(同479)。これまでのプロ野球の長い歴史の中で、300盗塁達成者で盗塁成功率が8割を超えた選手は5人だけである。

史上初の8割5分超え!?

西川の昨季までの通算盗塁成功率は8割6分4厘。順当にいけば300盗塁達成者の中で盗塁成功率がトップになるだけでなく、初の8割5分超えも射程圏内である。盗塁は成功するとチャンスは一気に拡大するが、失敗すると一気に潰えてしまうハイリスク・ハイリターンの戦術だ。西川は盗塁成功率には強いこだわりを持っていて、もっとも盗塁成功率が低いシーズンでも19年の7割9分2厘(盗塁19、盗塁刺5)と、如実に数字に表れている。

300盗塁達成とタイトル奪取へ

昨季はソフトバンク・周東佑京に最多盗塁のタイトルをさらわれ、ポスティングでのMLB移籍も叶わなかった。今季は期するものがあるだろう。加えて両リーグ最速で20盗塁を記録した西武の新星・若林楽人や初タイトルを狙う西武・源田壮亮といった新たなライバルも出現している。今季の盗塁成功率は6割3分6厘。まだ本来の姿ではないが、300盗塁達成と最多盗塁のタイトル奪取へ、西川は静かに闘志を燃やしている(記録は25日時点)。

余談

通算盗塁数トップの福本豊(阪急)の盗塁成功率は7割8分1厘(盗塁1065、盗塁刺299)。300盗塁達成者で盗塁成功率ワースト5は、高木豊(日本ハムなど)の6割4分3厘(盗塁321)、中暁生(中日)の6割7分5厘(同347)、石井琢朗(広島など)の6割7分9厘(同358)、吉田義男(阪神)の6割8分8厘(同350)、高橋慶彦(阪神など)の6割9分8厘(同477)。

栗山、2000安打へ

西武の最多安打記録

野村克也、土井正博、山崎裕之、秋山幸二、清原和博、松井稼頭央、和田一浩――。西武のユニフォームに袖を通した通算2000安打を達成した選手は多い。しかし、それは他球団での安打数を含めた数字であって、西武球団単独で2000安打を達成した選手は1979(昭和54)年の球団誕生以来まだいない。西武球団での最多安打記録は81~94年に在籍した石毛宏典が持っていた1806本だったが、それを2019年に塗り替えたのが栗山巧だ。昨季は101安打を放ち、通算1926安打とし、今季20年目のシーズンを迎えた。

ライオンズの“顔”

育英高校からドラフト4位で2002年に入団。5年目には84試合に出場。規定打席未達も、打率2割9分7厘、10本塁打を放ち、頭角を現す。これまで西武一筋で3割3度、08年には最多安打のタイトルを獲得。08、10、11年には外野手部門で、20年には指名打者部門でベストナインに選ばれ、10年にはダイヤモンドグラブ賞を受賞している。07年から14年連続で100試合以上に出場し、派手さはなく、知名度は低いが、同期の中村剛也と共に野手最年長であり、ライオンズの“顔”である。

特徴はユーティリティーの高さ

栗山の特徴はユーティリティーの高さだ。2008年には2番打者として22犠打を記録しながら、打点は74。つなぎ役とポイントゲッターの一人二役をこなした。通算100本塁打達成はNBP史上2番目のスローペースでありながら、17年には0-0から代打サヨナラ3ランを放つなど、勝負を決める一発もある。昨季は中村や山川穂高、森友哉といった主力打者の不振で4番に座り、シーズン自己最多タイの12号を放つなど3~7番の打順でアーチをかけ、どの打順でも自分の役割を果たすことができる。指揮官にとっては、非常に使い勝手が良く、重宝する選手である。

勲章の数字へ再スタート

今季の開幕戦では初回にオリックスのエース・山本由伸から2点目となる適時打を含め2安打を放ち、勝利に貢献。幸先の良いスタートを切ったが、足の張りのため、1試合のみの出場で戦線離脱。復帰戦となった30日のオリックス戦では代打で遊ゴロ併殺打に倒れたが、バットマンとして勲章の数字へ再スタートを切った。栗山が山賊打線で担うのは、打線のつながりをスムーズにする潤滑油のような役割ではないだろうか。2年ぶりの覇権奪回を狙う西武の攻撃陣の欠かせないピースであり、辻発彦監督も戦列復帰を待ち望んでいただろう。

NPB通算2000安打達成者の西武在籍時の安打数

選手名西武
在籍年数
西武在籍時
安打数
NPB通算
安打数
松井稼頭央1014392090
清原和博1113532122
秋山幸二1112242157
和田一浩1110322050
山崎裕之66702081
土井正博32652452
野村克也2582901

《余談》

栗山の直近5年の試合種類別打撃成績

D打率D本塁打N打率N本塁打
2016年.3312.2511
2017年.2124.2735
2018年.3406.2132
2019年.2431.2576
2020年.3604.2398
(注)D打率、D本塁打はデーゲーム、N打率、N本塁打はナイトゲームでの数字。
(出所)西武ライオンズ公式サイト                     

デーゲームで3割3分超が3度に対し、ナイトゲームでは最高打率が2割7分3厘と、デーゲームに強い傾向がある。本塁打は19年以降、ナイトゲームでよく打っている。打率はデーゲームとナイトゲームでは1年おきに高低が入れ替わり、今季は周期的にはナイトゲームのほうが高くなるが……。