山本、開幕戦連敗ストップに挑む

開幕戦9連敗中のオリックス

岡田彰布監督の就任年である2010年の開幕戦を白星で飾ったのを最後に、開幕戦での勝利がないオリックス。11年は先発・木佐貫洋が9回を投げ、自責点2と好投するも引き分け。翌年からの開幕戦の連敗は「9」にまで伸びている。連敗中の開幕戦の試合内容を見てみると、先発投手は9試合すべてで5イニング以上投げ、クオリティ・スタート(6イニング以上投げて、自責点2以内)が7試合。残りの2試合も先発はいずれも5回を投げ、自責点は3と2で開幕投手は試合をつくってはいる。1点差負けが4試合、2点差負けが3試合と善戦しているが、2試合の逆転サヨナラを含む延長戦にもつれこんでの敗戦が4試合あり、どうも勝利の女神にそっぽを向かれている印象がある。

tRAは2年連続トップ

今季から正式な指揮官となる中島聡監督は5年目の山本由伸を初の開幕投手に指名した。19年には最優秀防御率、昨季はシーズン終了間際に千賀滉大(ソフトバンク)にかわされ、僅差で防御率2位に終わったものの、最多奪三振のタイトルを千賀と分け合った。

野球のデータを統計的に分析するセイバーメトリクスで、tRA(true Runs Allowed)という指標がある。従来、投手の能力を測る代表的な数値は、自責点をもとに算出する「防御率」だったが、自責点はチームの守備力や救援陣の能力に影響を受ける。

「どのような打球が発生したかまでは投手の責任」という考えに基づき、四死球、奪三振、被本塁打、ゴロ、内野フライ、外野フライ(本塁打を除く)、ライナーという各事象の失点期待値とアウト期待値から算出するのがtRAだ。チームの守備力や救援陣の能力を除外した「真の失点率」といえる数値で、奪三振や内野フライ、ゴロが多く、被本塁打や四死球、ライナーが少ない投手ほど評価は高くなる。
(注)ゴロはアウトだけでなく安打も含めて、ゴロという性質の打球を意味する。

山本は19、20年と規定投球回数到達者ではtRAが両リーグを通じてトップで、今や日本球界のエースと言える存在だ。2年連続で最下位に沈んだチームを率いる中島監督の僥倖は一番勝てる確率が高い投手が“持ち駒”にあるということだ。それは開幕9連敗中のチームにとって“希望”でもある。

大きな意味を持つ一戦

山本はオープン戦で3試合に先発。18イニングで自責点は4(防御率2.00)。嶺井博希(DeNA)や大城卓三(巨人)といった下位打線の打者に本塁打を浴びているのは気がかりだが、仕上がりは順調といえるだろう。開幕戦の対戦相手・西武との相性は、19年は3試合に先発し2勝(1完封、防御率0.37)、昨季は4試合に先発し2勝1敗(防御率0.93)。両年とも被本塁打はゼロと抑え込んでいる。一方の西武の開幕投手も7年目で初の大役となる高橋光成。昨季はオリックス戦に4試合先発し3勝1敗(1完封、防御率1.93)。対戦カード別では最も多い勝利数を挙げ、オリックス戦にはいいイメージを持っているだろう。今季、大黒柱としての働きを期待される若きエース同士の対決となった。

今季、初の二桁勝利を目指す山本にとっても、正式な指揮官として初采配となる中嶋監督にとっても、大きな意味を持つ一戦となる。開幕戦9連敗でのオリックスの1試合あたりの得点は約2.2点(完封負けが2回)。打線の奮起も期待されるが、まずは先発が最少失点に抑えることが最重要課題になる。勝利の女神を微笑ませる“快投”を山本が見せることができるか、大いに注目される。

オープン戦とシーズン戦績の相関関係

一般的には“内容”重視

球春到来。プロ野球ファンが待ち詫びた季節がやってきた。今年もプロ野球の公式戦に先立ち、オープン戦が開催される。今年は新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言の期間延長で、2月に沖縄県内で組まれていた10試合が無観客での練習試合となり、3月2日~21日まで84試合が開催される予定だ。オープン戦は調整の場という位置付けなので、勝つに越したことはないが、“結果”よりも“内容”が重視されるとの見方が一般的である。果たしてオープン戦の戦績はどの程度シーズンの成績と相関関係があるのだろうか。直近10年の戦績を調べてみた(昨年はオープン戦終了後、開幕まで3ヵ月ほど期間があく変則日程だったので対象外とした)。

直近10年の戦績

オープン戦で勝率トップだった9チームのうち、リーグ優勝したのは2013年の巨人と14、15年のソフトバンクの3回。Aクラス入りが6回である。オープン戦で勝率トップになりながらもシーズンで最下位に沈んだケース(17年のロッテ)もある。

オープン戦で最低勝率だったチームがリーグ優勝したことはなく、公式戦でも最下位に沈んだのは11年の横浜(ベイスターズ)、14年のヤクルト、16年のオリックスと中日、18年の阪神の5チーム。Bクラスに終わったのは12チーム中10チームだった。

オープン戦で戦績は振るわなくても、リーグ優勝した17、18年の広島(両年とも11位)、19年の西武(10位)のような例外もあるので絶対的な法則ではないが、オープン戦の戦績が極端に悪いと本番で挽回するのは難しい傾向がある。そういう意味では指揮官としては“内容”だけでなく、“結果”も欲しいというところだろう。

オープン戦は“真剣勝負の場”

直近10年のオープン戦で、安定して好成績を残しているのがソフトバンクだ。勝率トップが2回、2位が3回、3位が2回、4位が1回(昨年も2位)。10位と精彩を欠いた18年以外、いずれも上位の成績を残している。この要因を分析すると、11年に3軍を創設したソフトバンクの選手層の厚さと競争の激しさが挙げられるだろう。オープン戦でアピールしなければ、1軍への切符を手に入れることはできない。生き残りをかけた生存競争は熾烈であり、それが選手の闘争心に火を付け、勝利へとつながっているという見方ができる。ソフトバンクの選手にとって、オープン戦は“真剣勝負の場”といえる。

直近10年でリーグ優勝5回、日本一7回と近年のプロ野球はソフトバンクの一人勝ちの様相を呈しているが、選手層の厚さとチーム内での競争意識の高さがそのベースになっていることは想像に難くない。