史上最大の逆転劇に挑むDeNA

ヤクルトに史上最速のマジック

セ・リーグのペナントレースが風雲を急を告げている。7月2日に首位ヤクルトに史上最速で優勝へのマジックナンバー「53」が点灯し、昨季日本一に輝いたチームのリーグ連覇は確実かと思われたが、DeNAが猛追。一時は4ゲーム差にまで詰め寄った。(数字は8月28日現在)

首位まで17.5ゲーム差

三浦大輔監督の就任1年目の昨季は最下位に終わり、雪辱を期して臨んだ今季。投手陣の柱として期待し、開幕投手に指名した東克樹は1勝5敗と精彩を欠き、規定投球回数到達者はセ・リーグのチームで唯一いない。軸となる先発投手の不在がウイークポイントになり、シーズン序盤は下位に低迷。6月26日には借金が9にまで膨れ上がり、17日には最下位に転落。23日に最下位を脱出したが、7月3日には首位・ヤクルトとのゲーム差が17.5まで開き、今季の優勝は絶望かと思われた。

球団新記録の本拠地17連勝

7月は10勝7敗と今季初めて月間で勝ち越し。29日にヤクルトが阪神に敗れたため、DeNAの自力優勝の可能性が復活し、ヤクルトのマジックナンバーは消滅。8月は8連勝を含む16勝6敗。8月5日の92試合目で借金を返済して以後、貯金生活を続けている。特筆すべきは、6月28日から8月21日まで本拠地17連勝(1分け挟む)と、球団新記録を塗り替え、7月31日に「12」あったヤクルトとのゲーム差を一気に縮めた。今季のDeNAはホームでは、31勝23敗1分けとファンの声援を力に変えている。

試練の戦い

残り試合はヤクルトが27、DeNAが32。直接対決も6試合残す。カード別の対戦成績をみると、ヤクルトは中日に8勝10敗と負け越しているのに対し、DeNAは12勝3敗1分けとお得意様にしている。9試合残す中日戦で、どれだけ貯金を稼げるかもポイントになる。雨天中止に加えて、新型コロナウイルス感染者が続出した巨人戦が中止になった影響で、9月は16日からの10連戦を含み、30日間で27試合という過密日程がDeNAを待ち受ける。プロ野球史上史上最大の逆転劇へ、試練の戦いとなる。

清宮幸太郎、球宴でMVP

「プラスワン」枠で選出

7月26日にペイペイドームで行われたマイナビオールスター2022の第1戦。2-2で迎えた九回裏、二死無走者で日本ハム・清宮幸太郎が左中間席へサヨナラ本塁打を放ち、MVPを受賞。賞金300万円を獲得した。清宮はプロ入り5年目の23歳で球宴初出場。ファンと選手間の投票、監督選抜から漏れた最後の1人をファンが選ぶ「プラスワン」枠での出場で、1票を投じたファンの期待に最高の結果で応えた。プロ入り通算32本塁打も、サヨナラ弾は初めてだった。

名スラッガーの仲間入り

球宴でのサヨナラ本塁打は、1963年の近藤和彦(大洋)、68年の江藤慎一(中日)、74年の高井保弘(阪急)、79年の山本浩二(広島)、81年の掛布雅之(阪神)、86年の吉村禎章(巨人)に次ぐ史上7人目。球宴での最初の出場試合でのサヨナラ弾は高井に次いで2人目、23歳2ヵ月での球宴サヨナラ弾は吉村と並ぶ最年少記録。球史に名を残すスラッガーの仲間入りを果たした。

今季は背水の陣

早稲田実業時代は高校歴代ナンバー1の通算111本塁打を放ち、2017年のドラフト会議の“超”目玉だった。7球団の競合の末、ドラフト1位で日本ハムに入団。清宮の外れ1位でヤクルトが指名した村上宗隆が2年目に早くも36本塁打を放って頭角を現し、4年目の昨季には本塁打王を獲得。今や押しも押されもせぬ全セの4番であるのに対し、清宮はルーキーイヤーの18年から21年まで3シーズン連続で7本塁打に終わり、昨季はイースタン・リーグ最多本塁打賞(19本)に輝くも、1軍での出場機会はなかった。新庄剛志監督が就任した今季、背水の陣で臨んだ。

チャンスでの弱さ

今季はオールスター前まで82試合に出場し、打率2割2分6厘(規定打席未満)、長打率4割5分7厘の成績を残すも、得点圏打率は1割6分9厘。今季はシーズン自己最多となる11本塁打を放っているが、すべてソロと、チャンスには滅法弱かった。それが野球人憧れの夢の舞台で、ここぞという場面で“汚名返上”の一発を放った。ヤクルト・村上と比べて、打席での漲るような気迫に乏しい。それは、同じリーグで戦っている全パ・中嶋聡監督の「まさか打つとは思っていなかった」というコメントにも如実に表れている。

華々しい打棒を期待

5強1弱の今季のパ・リーグで、ペナントレースの蚊帳の外にいる日本ハム。ファイターズガールが踊る「きつねダンス」が球界の内外で注目度が高く、今季の日本ハムの主役となりつつある。清宮にはそれに勝るような、また敵将が「まさか…」と驚愕するような“華々しい打棒”を後半戦では期待したい。