ヤクルト、2022年交流戦V

効果的な本塁打攻勢

2018年以来、4年ぶり2度目の交流戦の優勝(勝率1位を含む)を飾ったヤクルト。5月24日の交流戦開幕カードの日本ハム戦、0-1から代打・内山壮真のプロ入り初本塁打で追いつき、1-1で迎えた延長11回に村上宗隆のサヨナラ本塁打で決着をつけた。翌日は4-6の九回に山崎晃大朗が”人生初の”劇的なサヨナラ3ラン。この2試合連続のサヨナラ勝ちで波に乗り、セ・リーグのチーム初の全カード勝ち越しで優勝に花を添えた。交流戦を通じて際立ったのは効果的な本塁打攻勢だった。チーム本塁打はトップの24本、最少の広島は2本。チーム得点はトップの78点、最少の広島は33点。交流戦最下位のチームと比較して、打線の破壊力と得点力の差は歴然だった。左半月板の手術で長期離脱を余儀なくされている昨季19本塁打のドミンゴ・サンタナの不在をまったく感じさせなかった。

交流戦MVPは村上

交流戦MVPに輝いたのは6本塁打(2位タイ)、13打点(3位タイ)、打率3割5分1厘(4位)、長打率7割2厘(2位)の村上。6月4日の西武戦では、1-2で迎えた6回に逆転2ラン。同月10日のソフトバンク戦では1-1の4回に敵軍のエース・千賀滉大から勝ち越しソロ。翌日の交流戦の優勝を決めた一戦では、3点ビハインドの状況での追撃の2ランに続き、次打席では嘉弥真新也から逆転満塁弾。村上封じに起用された変則左腕に今季初被弾をお見舞いした。村上が本塁打を放った5試合でチームは4勝と、勝利に貢献する打撃を披露した。塩見泰隆は5月27日の楽天戦で、3打席連続弾。攻撃陣のリーダー・山田哲人は計5本のアーチをかけ、チームを鼓舞。6月3日の西武戦では、小川泰弘が投げては8回無失点、打っては決勝ソロと投打にわたる活躍で1-0の接戦を制した。

球団2度目の連覇へ

交流戦で14勝4敗と「10」の貯金をつくり、交流戦の前後で2位巨人とのゲーム差を1.0から7.0に広げた。昨季は9月22日に初めて首位に立ったが、今季は早くも独走態勢を築きつつある。交流戦最後のカードでは、現在パ・リーグ首位のソフトバンクを3タテ。日本シリーズへ向け、縁起良く交流戦を締め括った。今季が3年契約最終年だった高津臣吾監督も契約を2年延長。球団もその手腕を認め、将来を見据えたチーム作りを委ねた。高津監督の恩師・野村克也元監督が指揮を執った1992、93年以来の球団2度目となるセ・リーグ連覇へ、視界は良好である。

マー君のリベンジ

ワーストの成績

昨年、東日本大震災から10年目となる節目のシーズンに日本球界に復帰した田中将大。2年契約で、NPB史上最高の年棒9億円プラス出来高払い(金額は推定)。田中将個人のファンクラブ「マー君クラブVIP」は10人限定の募集で、年会費180万円ながら受付開始から14分で完売になり、耳目を集めた。楽天ファンは2013年に無傷の24連勝で球団初のリーグ優勝と日本一に貢献したときのような神がかりな投球を期待しただろうが、NPB復帰1年目は4勝9敗。プロ入り後、ワーストといえる成績に終わった。

チームも失速

防御率3.01はチームトップ(リーグ5位)だったが、チームの貯金を5つ減らした。打線の援護に恵まれなかった面もあるが、東京五輪でのノックアウトステージ第1戦のアメリカ戦のように、自軍が先制しても逆転されるなど、勝負どころで痛打を浴びるシーンが目に付いた。石井一久監督にとっても田中将の成績は大誤算だっただろう。昨季、7月13日のソフトバンク戦で4勝目を挙げた後、東京五輪後に先発した10試合で、チームは8敗2分け。自身は4連敗に終わった。シーズン序盤には首位に立ったチームも、田中将の成績に歩調を合わせるように失速した。

被本塁打率に顕著な違い

今季は8試合に先発し4勝3敗(5月29日現在)。5月10日のロッテ戦では、日本球界復帰後の初完封勝利を飾り、防御率1.851(リーグ5位)と好調を維持している。昨季との顕著な違いは被本塁打率だ。昨季は0.98(155 2/3回で17本)と1試合(9イニング)にほぼ1本被弾していたが、今季はここまで0.46(58 1/3回で3本)と半減した。田中将も33歳になり、全盛期からは球威が落ちていることは否めないだろう。そこをMLBで培った投球術でどう補うか――。それが最大のテーマになる。

今季の楽天の浮沈がかかる

4月下旬から5月上旬にかけての楽天の球団新記録となる11連勝は田中将で始まり、田中将で終わった。連勝中、計3勝をマークし、投手陣を牽引。首位を走るチームを支えている。昨季は涌井秀章、今季は則本昂大に開幕投手の座は譲ったが、楽天投手陣の精神的な支柱であることは疑う余地はない。田中将自身が昨季の成績に忸怩たる思いを抱いているだろう。昨オフ、MLBに復帰する選択肢もあったが、楽天に残留し、リベンジする道を選んだ背番号「18」。今季の楽天の浮沈はその右腕にかかっているといっても過言ではない。