西武、42年ぶり最下位からの再起

球団創立年以来の最下位

昨季、球団創立年以来42年ぶりの最下位に沈んだ西武。2018年、19年はチーム防御率がリーグ最下位でありながらパ・リーグを連覇し、投手力の弱さを攻撃力で補っていた。昨季は、山川穂高の不振、外崎修汰の死球による骨折での戦線離脱に加え、19年オフにシンシナティ・レッズにFA移籍した秋山翔吾に代わるリードオフマンの不在。中村剛也、栗山巧らのベテランに衰えが目立ち、攻撃力が大幅に低下した。18、19年にリーグトップだった総得点、打率それぞれ5位、4位、リーグ2位だった本塁打は4位に低迷した。

投手王国のイメージ

西武といえば、投手王国のイメージがある。1982年、広岡達朗監督の下、球団創立4年目にして初めてパ・リーグを制し、日本シリーズでは中日を破る。翌年は球界の盟主・巨人を倒し、2年連続で日本一に輝く。このシーズン、パ・リーグの防御率10傑に東尾修(1位)、高橋直樹(2位)、松沼雅之(3位)、杉本正(6位)、松沼博久(9位)の5人が名を連ねた。森衹晶監督が率いた1986年から94年の9年間でリーグ優勝8度、日本一6度の黄金時代には、88年以外はチーム防御率が1位だったことが強烈な印象となっている。投手陣の質の高さと層の厚さが”常勝チームの礎”となっていた。

左腕の先発陣への期待

野球は投手力が大きなウエートを占めるスポーツ。西武がかつての強さを取り戻すには、4年連続でチーム防御率ワーストの投手陣の立て直しが急務である。黄金時代の西武野球を知悉している辻発彦監督がそのあたりをどう整備するのか手腕が問われるところだ。昨年のドラフトで1位指名された隅田知一郎、同2位指名の佐藤隼輔は、左腕不在の先発陣の立て直しに大きな期待がかかる。

隅田と佐藤

隅田は広島、巨人、ヤクルトとの競合の末、獲得。大学ナンバーワン左腕の呼び声高く、西日本工大からは2人目のプロ入り、新人選手選択会議で指名された初の選手となった。17年に最多勝と最優秀防御率のタイトルを獲得した菊池雄星(現ブルージェイズ)がつけた背番号「16」を背負う。佐藤は筑波大学の先輩でオリックスから指名された杉本友以来となる25年ぶり2人目となる国立大出身者のドラフト1位指名はならなかったが、目標に新人王を掲げている。

日本一への起爆剤

隅田は開幕2戦目となるオリックス戦に先発。7回被安打1、自責点0と好投し、昨季のパ・リーグの新人王・宮城大弥に投げ勝ち、プロ初登板初勝利を挙げた。その後は、4試合に先発するも3連敗。佐藤は3月29日の日本ハム戦に先発し。5回自責点0にまとめ、こちらもプロ初登板初勝利を飾った。佐藤もその後、3試合に先発し3連敗。隅田も佐藤も、プロのレベルの高さを肌で感じているだろう。球団では左腕の二桁勝利は18年の菊池、榎田大樹以来出ていない。この両左腕が揃って二桁勝利を挙げる活躍を見せれば、パ・リーグの覇権奪回、ひいては2008年以来の日本一への起爆剤となる。

2022年の開幕投手

“熱き戦い”が始まる

野球が伝来し150年目となるメモリアルなシーズンが3月25日に開幕する。昨季はセ・リーグはヤクルト、パ・リーグはオリックスと2年連続最下位の球団がリーグ制覇し、下剋上の嵐が吹き荒れた。千勝監督・原辰徳が率いる巨人や直近10年で6度の日本一に輝いたソフトバンクは捲土重来を期す。昨季惜しくも優勝を逃し、矢野燿大監督が背水の陣で臨む阪神。球団創立年以来42年ぶりの最下位に沈んだ西武。発言や采配が注目を集める新庄剛志新監督が指揮を執る日本ハム。今季はどのようなペナントレースが繰り広げられるのだろうか。“熱き戦い”が始まる――。

セ・リーグの開幕投手

セ・リーグの開幕カードは、阪神対ヤクルト(京セラドーム)、巨人対中日(東京ドーム)、DeNA対広島(横浜)。昨季日本一に輝いたヤクルトは、リーグ優勝を激しく争った阪神と相まみえる。ヤクルトの先発は2年連続6度目の小川泰弘(自身の開幕戦の成績:1勝1敗)。有力視された奥川恭伸は29日の巨人との本拠地開幕戦の先発にまわることが発表された。阪神の先発は当初は昨季の最多勝投手・青柳晃洋に決定していたが、青柳が新型コロナウイルスの濃厚接触者の疑いが生じ、昨年に続き2度目となる藤浪晋太郎(同:勝ち負けは付いていない)に急遽白羽の矢が立ち、昨季と同じ顔合わせとなった。

V奪還を狙う巨人は5年連続8度目となる菅野智之(同:4勝2敗)。中日の立浪和義新監督は2年ぶり4度目となる大野雄大(同:1勝1敗)を指名。沢村賞投手の投げ合いとなる。昨季はともに不本意な成績に終わったエースが、リベンジをかけて開幕戦に臨む。

DeNAの三浦大輔監督はプロ入り5年目の東克樹を初の開幕投手に抜擢。ルーキーイヤーに11勝を挙げたのち、精彩を欠くサウスポーを今季の先発ローテの柱として期待する。DeNAは6年連続でサウスポーが開幕投手を務めることになる。広島は昨季、青柳と最多勝のタイトルを分け合った九里亜蓮も候補に挙がっていたが、佐々岡真司監督は大瀬良大地(同:2勝)を指名。4年連続4回目の大役となる。

パ・リーグの開幕投手

パ・リーグの開幕カードは西武対オリックス(ベルーナドーム)、楽天対ロッテ(楽天生命パーク)、ソフトバンク対日本ハム(ペイペイドーム)。昨季のパ・リーグの覇者・オリックスは昨季最多勝のタイトルを獲得した山本由伸(同:1敗)が2年連続2回目の開幕戦の先発マウンドに上がる。オリックスは2010年を最後に開幕戦の勝利から遠ざかっているが、12年ぶりの開幕戦の勝利がエースの右腕にかかる。西武は昨年に続き2度目の高橋光成(同:1勝)と、こちらも昨季と同じ顔合わせになった。昨季の開幕戦では高橋に軍配が上がったが、山本が沢村賞投手の意地を見せるか――。

楽天は2年ぶり7度目となる則本昂大(同:3勝2敗)が大役を任された。9年ぶりのリーグ制覇と日本一へチームに勢いをもたらす投球ができるか。ロッテは先発ローテの柱として期待される佐々木朗希、昨季ロッテ投手陣で唯一規定投球回に達し、初の二桁勝利を挙げた小島和哉も考えられたが、2年ぶり3度目となる石川歩(同:勝ち負けは付いていない)が開幕マウンドに上がる。

ソフトバンクの藤本博史新監督は、6年連続で二けた勝利を挙げている千賀滉大(同:勝ち負けは付いていない)に3年ぶり3度目となる開幕戦の先発マウンドを託す。開幕投手発表のトリを飾った日本ハム。順当なら昨季12勝(防御率はリーグ3位の2.81)を挙げた上沢直之だったろうが、新庄監督はドラフト8位ルーキーの北山亘基を指名。サプライズな選手起用で、新庄劇場が幕を開ける。

監督の明確な意図

監督にとって開幕投手の人選は、絶対的なエースがいる場合を除いて頭を悩ます問題であるだろう。勢いのある若い投手を抜擢したいと思いつつも、実績のある投手への遠慮も頭をもたげる。またベテランの経験を買うこともあるだろうし、若手に大舞台を経験させ、成長への糧にしたいという思惑が働く場合もあるだろう。そこには“今季をどう戦うか”についての監督の明確な意図がこめられている。