日本から移籍した野手最高額
昨年オフにオリックスからボストン・レッドソックスにポスティングで移籍した吉田正尚。メジャー公式サイトによると、契約金は5年総額9千万ドル(約123億3千万円)と報じられ、日本から移籍した野手では鈴木誠也(カブス)の5年8500万ドルを抜いて最高額となり、球団の評価の高さと期待の大きさが表れている。
NPBと侍ジャパンでの実績
吉田は敦賀気比高、青山学院大を経て、2016年にドラフト1位でオリックスに入団。7年在籍したオリックス時代、通算打率は3割2分7厘で、21年に2年連続で首位打者に輝く。入団以降シーズン2桁本塁打を達成し、通算長打率は5割3分9厘。通算出塁率は4割2分1厘で、22年に2年連続で最高出塁率のタイトルを獲得。外野手で4度、DHで1度、ベストナインに選出されている。21年はチームの四半世紀ぶりのリーグ優勝、22年はパ・リーグ連覇と26年ぶりの日本一に貢献。侍ジャパンの一員としても、その打棒を遺憾なく発揮した。21年の東京五輪では全5試合に3番でスタメン出場し、打率3割5分(20打数7安打)2打点の活躍で、侍ジャパンの悲願の金メダル獲得に貢献。今年開催された第5回WBCでは、全7試合にスタメン出場。準々決勝のイタリア戦から調子の上がらない村上宗隆の代わりに4番に座り、打率4割9厘(22打数9安打)13打点、2本塁打と躍動し、侍ジャパンの3大会ぶりの優勝に貢献。13打点は大会新記録で、外野手としてベストナインに選出された。
開幕4番でスタート
当初は1番での起用を取り沙汰されていたが、3月30日のボルティモア・オリオールズとの開幕戦では、4番打者を任され、4打数2安打1打点と幸先の良いスタートを切った。その後、スランプに陥り、4月18日の試合終了後には打率は1割6分7厘にまで下げたが、23日の敵地ミルウォーキーでのブルワーズ戦で快挙を成し遂げた。八回の第4打席はソロ、第5打席ではグランドスラムを放ち、日本人メジャーリーガーとして初の1イニング2本のアーチをかけた。レッドソックスではMLB通算541本塁打を放ったデビッド・オルティーズが2008年に記録して以来、4人目となる大記録だった。サプライズがあった23日以降は打率4割3分5厘(23打数10安打)で、通算打率も2割7分4厘まで上げてきた(記録は現地時間29日現在)。
調子が上向いてきた”証”
WBC準決勝のメキシコ戦で、左腕ジョジョ・ロメロ(セントルイス・カージナルス)から放った同点3ランは内角の沈む球を巧みにすくい上げて、右翼ポール際へと運んだ。あのボールをフェアゾーンに飛ばし、なおかつ柵越えさせるという至芸を見せたが、打球を遠くへ飛ばす能力とミート力を兼ね備えた吉田ならでは打棒だった。1イニング2発目のグランドスラムも内角へと変化するスライダーを捉えたが、あのコースのボールをスタンドインさせることができるのは調子が上向いてきた“証”といえる。
最優秀新人賞と首位打者へ
95年の野茂英雄、2000年の佐々木主浩、01年のイチロー、18年の大谷翔平に続く、5人目となる日本人メジャーリーガーの最優秀新人賞への期待が高まる。加えて04年のイチロー以来となるMLBの日本人首位打者への注目も集まる。吉田の打撃技術をもってすれば不可能ではない。